感染抑制狙うも硬直な姿勢に批判
2022年も新型コロナウイルスに収束の動きは見られず、観光業界に暗い影を落とした。イン・アウトバウンドの回復の遅れは顕著で、特に政府の水際対策は日本への旅行を望む外国人観光客の大きな壁となった。
感染者増を抑えたい政府の考えは理解できるものの、外国人の新規入国をかたくなに拒む姿勢は観光業界のみならず、経済界からも「やりすぎではないか」と批判された。
観光関連の12団体・企業は22年4月、自民党観光立国調査会に水際対策の緩和を求める要望書を提出。「ウィズコロナで国際往来を再開している欧米諸国等との差は大きく、国際競争力の低下は否めない」として、(1)観光目的の入国の早期再開(2)入国者数の制限撤廃(3)外務省感染症危険情報レベルの見直し―を求めた。
要望書は、水際対策が続けば「経済的にはもちろん、旅行先・留学先としてこれまで築き上げてきたわが国の評判を著しく損なう事態となり、国民の海外に対する広い視野をも失うことで、国力の低下を招き、やがては世界に必要とされない国になりかねない」と危機感を露わにした。
経済を回すべきだという世論に押されてか、政府は22年10月11日、入国者数の上限の撤廃や外国人の個人旅行の解禁など、水際対策の大幅緩和に踏みきった。
日本政府観光局によると、10月の訪日外国人観光客数は49万8千人となり、9月の20万6500人から大きく増えた。緩和の効果が出たとみられる。ただ、感染拡大前の19年10月は約250万人だったから、まだ5分の1にすぎない。中国がゼロコロナ政策をとり出入国を厳しく制限、中国人観光客が戻っていないことがこの数字に表れている。
緩和効果は航空路線にも波及し、新千歳空港ではコロナ禍で運休していた国際線の運航再開が相次いでいる。例えば、キャセイパシフィック航空は新千歳と香港を結ぶ便の運航をおよそ2年9カ月ぶりに再開させたという。
町なかや観光地で外国人観光客を見る機会も増えてきたが、インバウンド効果が実際に表れ始めるのはもう少し時間がかかりそうだ。