【2023年観光業界のキーワード】全国旅行支援 記者 向野 悟


事業終了を見据え収益力向上を

 国の観光支援策「全国旅行支援」は1月10日に新たなスタートを切る。事業の開始や停止は、地域ごとの新型コロナウイルスの感染状況を踏まえて都道府県が判断できるが、観光庁は、行動制限が必要となる事態が生じない限り、実施する方針を示している。第8波が懸念されてはいるが、感染拡大防止と社会経済活動の両立を目指し、観光需要を喚起したい考えだ。

 観光庁が当初、宿泊実績などに応じて都道府県に配分した全国旅行支援の予算の総額は約5600億円。その残額に加え、1月10日からの事業には、観光庁が「新たなGo Toトラベル」の事業費として別途確保していた約2700億円が活用される。

 事業期間は予算の範囲内で都道府県が設定し、予算の消化状況に応じて順次終了となる。12月下旬の時点で発表されている情報では、終了時期を3月末の予定としている都道府県が多いようだ。年明け以降の事業は、一般的に旅行需要が落ち込む冬期が対象期間で、割引率が40%から20%に引き下げられるほか、割引上限額や平日のクーポン利用額も減額される。短期間で終わらず、ゴールデンウイーク前までの細く長い需要喚起策となれば本来は理想的だろう。

 割引率などを引き下げる狙いは、事業終了後の旅行需要への反動を軽減するためだ。国の財政支援による旅行費用割引は、Go Toトラベルが2020年7~12月に実施された後、21年4月に県民割がスタート。県民割は一部に未実施の地域、中断した期間があるが、誘客範囲を拡大しながら継続され、22年10月に全国旅行支援に移行した。旅行費用の割引に多額の予算が投じられ、その実施は長期間に及んでいる。市場の正常化に向けたソフトランディングが課題となっている。

 観光産業には、コロナ禍で受けたダメージの大きさから、インバウンドが本格的に回復するまでの間、長期にわたる需要喚起策の実施を期待する声もあるが、アフター・コロナを見据えて、国の補助金による割引に依存せずとも、旅行市場が活性化するような準備を進めておく必要がある。

 観光産業は、人手不足、借入金の返済、エネルギー・原材料価格の高騰など、多くの課題を抱えているが、国費による観光需要喚起策が終了した後も、経営が持続するよう収益力向上などに取り組まなければならない。一方で、国や自治体には、観光産業の経営基盤の強化につながるような継続的な観光支援策の実施を期待したい。

 
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