【駅メロ とわずがたり 4】秋田内陸線米内沢駅内 人々をつなぐ「浜辺の歌」 藤澤志穂子

  • 2022年11月24日

米内沢駅(秋田内陸縦貫鉄道提供)

 秋田県の山間部を走る「秋田内陸線」には、「応援したい」と思わせる何かがある。

 角館(仙北市)から鷹巣(北秋田市)まで94・2キロを走る第三セクター。渓谷を渡る、四季折々に風光明媚なローカル線で、コロナ禍前は海外からも多くの観光客が訪れた。イベント列車も多く、人気だったのが、沿線のお母さんたちが手作り総菜を振る舞う「ごっつぉ(秋田弁で「ごちそう」)玉手箱」。ここで「雪の中を走るローカル線に乗りたい」と来日した米国人ビジネスマンと偶然に乗り合わせたことがある。彼は、「BENTO(弁当)列車アメイジング!」を連発、車窓を頻繁にカメラに収めていた。絶景とともに、地域総出で盛り上げようとする熱意には心を動かされる。

 その魅力の一つに、米内沢駅のメロディーがある。郷土出身の作曲家、成田為三の代表曲「浜辺の歌」が旧国鉄時代の1985年から流れている。初代の音源は旧森吉町(現在の北秋田市)役場の職員が発案、駅に提供した。2代目は1990年、役場の職員で、秋田大学で音楽を専攻した木村静子さんが編曲・シンセサイザーで演奏した。2019年からはミュージシャン、向谷実さんが制作した3代目となる。向谷さんは東京出身だが、成田への尊敬の念と鉄道ファンという縁から、無償で音源を提供した。米内沢駅の周辺はひなびた田舎で住宅が点在し、名所といえば成田の資料を集めた「浜辺の歌音楽館」くらい。列車到着前、静かな地域に響くのどかなメロディーは、何ともほっこりした気分にさせてくれた。

 秋田内陸線は昭和初期に、沿線の旧阿仁鉱山から鉱石を運ぶために設置された。かつては多くの通勤・通学客でにぎわったが、鉱山は1978年に閉山、その後は過疎化に歯止めがかからない。秋田県や周辺自治体が経営を支え、存続の条件は「年間2億円以内の赤字」。辛うじてクリアしてきたが今年8月、沿線を豪雨が襲い、米内沢を含む鷹巣―阿仁合間が不通になってしまう。年内の全線開通を目指しているが、ギリギリの経営が続くローカル線の生き残りとは、どうあるべきなのか。

 一つの答えは「人が集まれる駅」だろう。米内沢駅は別名「音楽と笑顔の駅」。構内にストリートピアノを置き、地元NPO運営の駄菓子屋も出店している。あるとき、小学生くらいの男の子と母がピアノを弾きにきた場面に遭遇した。たどたどしく奏でる男の子の笑顔と音色はほほえましいものだった。いま、駅構内は不通に伴う代行バスの待合所として利用され、バスの到着前に「浜辺の歌」が流れている。「音楽で沿線を盛り上げたい」(吉田裕幸社長)という秋田内陸線の存続は、地域住民にどれだけ寄り添えるかにかかっている。

 ※元新聞記者、昭和女子大学現代ビジネス研究所研究員。「乗り鉄」から鉄道研究家への道を目指している。著書に「釣りキチ三平の夢 矢口高雄外伝」(世界文化社)など。


米内沢駅(秋田内陸縦貫鉄道提供)

 
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