【駅メロ とわずがたり 25】JR仙台駅 花束に「宗さん」の温かさ 藤澤志穂子


さとう宗幸さん

 東北新幹線でJR仙台駅に着くと、「青葉城恋唄」のメロディが聞こえてくる。1978年5月発表、仙台出身のさとう宗幸さんのメジャーデビュー曲で、現在は仙台フィルハーモニー管弦楽団の生演奏による音源だ。歌詞にある「広瀬川」「青葉城」「杜の都」の情景が浮かび、発車を知らせる鐘の音で締めくくられる。ひとときの間、城下町・仙台を感じさせる「癒やし」の時間だ。

 「青葉城恋唄」はシングル盤を100万枚も売る爆発的なヒットとなり、仙台の「ご当地ソング」となった。きっかけは発表当時の旧国鉄仙台駅で、当時の米山晴夫駅長(故人)が、郷土の若者の挑戦を応援しようと構内でレコードをかけまくったこと。「当時の国鉄では、おとがめを受けたのかもしれないけれど、毅然とした方でした。感謝してもしきれない。今もホームで1日に何回も流してもらえるのは、アーティスト冥利につきます」とさとうさんは振り返る。

 発表から45年余り、さとうさんは今も仙台を拠点に活動を続けている。1995年からはミヤギテレビ(日本テレビ系)の平日、月曜から金曜に生放送されている夕方のワイドショー番組「OH!バンデス」での司会に就任。番組は2024年で30年目に入った。さとうさんは、「宗さん」の愛称で呼ばれている。

 「青葉城恋唄」には、2011年3月11日に起きた東日本大震災の復興への願いも込められた。

 さとうさんが震災に遭遇したのはテレビ局内、生放送の直前だった。局舎が被災して、放送は1週間余り中断。番組の再開時にさとうさんが真っ先に披露したのが、「青葉城恋唄」の弾き語りだった。「『失っていた日常が戻ってきた』という反響が寄せられた。僕の本業はあくまでも歌手。歌の力を感じました」。

 さとうさんは2023年11月5日、仙台でデビュー45周年の記念ライブを行った。1曲目は震災の時と同じ、「青葉城恋唄」のギター弾き語りだった。会場内のロビーには、贈られた多くの花飾りが、あふれんばかりに置かれていた。地元銀行の頭取から、大企業の仙台支社長など財界人から、飲食店など市井の人まで、「宗さん」が仙台でいかに多くの人々に愛されているかがよく分かる。

 コンサート終了後、ロビーでは「どうぞお持ちください」というメッセージとともに多くの花束が用意されていた。贈られた花からスタッフが作り分けたものだった。私はこれまで多くのコンサートに足を運んできたが、こうした形のプレゼントは初めてだ。来場者への、さとうさんの感謝の気持ちだったのだろう。

 「いいコンサートだったね」と、帰りがけに一緒になった女性と話しながら最寄りの地下鉄の駅まで歩いた。心地よい余韻と花束とともに、仙台から東京行きの新幹線に乗りこんだ。

 ※元産経新聞経済部記者、メディア・コンサルタント、大学研究員。「乗り鉄」から鉄道研究家への道を目指している。著書に「釣りキチ三平の夢 矢口高雄外伝」(世界文化社)など。


さとう宗幸さん

 
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