【駅メロ とわずがたり 8】「秋田犬の里」を歌うデュオ「ダックスムーン」 藤澤志穂子


ダックスムーン

 「忠犬ハチ公」はちょうど100年前の1923(大正12)年、現在の秋田県大館市で生まれた秋田犬。生後50日で、大館駅から列車に乗って東京帝国大学の上野英三郎教授にもらわれていった。教授亡き後も渋谷駅前で帰りを待ち続けた姿は今も語り継がれ、今年は生誕100年を記念したさまざまなイベントが大館市と渋谷区を中心に企画されている。

 ハチ公が旅立った大館駅の上り線のメロディーは「ハチ公物語」。大館市を拠点に活動を続ける音楽デュオ「ダックスムーン」(Ducks Moon)のオリジナルで2007年から採用されている。秋田大学北秋田分校長で元小学校校長の三浦栄一さん(63)=写真左=と、ウクレレ教室主催で元歯科技工士の木村孝明さん(61)=同右、ダックスムーン提供=のコンビで、ともに大館市出身、高校で出会い、40年以上も一緒に歌い続けてきた。主に三浦さんが作詞とボーカル、木村さんが作曲とギター、キーボードを担当、一時はプロを目指したが、「地元で楽しみながら音楽をやろう」と、仕事のかたわら音楽活動を続けてきた。

 大館駅のメロディーは、その音楽にほれ込んだ当時の駅長のたっての願いで制作された。過疎化が進む大館を「何とか元気にしたい」という駅長の思いに応えた曲は、ハチ公と教授の絆と、待つことの切なさを温かく見守る、優しくも透明なメロディー。デュオ名の由来でもある「月夜にアヒルが歌う」イメージに近い曲調が特徴だ。

 大館駅では下り線で同じくダックスムーンの「きりたんぽ物語」が流れている。毎年秋に大館市で開催される「きりたんぽまつり」のテーマソングとして制作された。やはり毎年2月に大館市で開催される飴(あめ)のお祭り「アメッコ市」にも曲を提供している。各種イベントの際にはミニコンサートを実施、1月末の「比内とりの市」にも出演し、喝采を浴びた。

 最近は活動が大館市以外にも広がった。「世界三大樹氷」の一つで知られる森吉山(秋田県北秋田市)の近くにある森吉山ダムの振興のため、四季折々に美しいダム湖を歌った「四季美湖物語」を提供。この曲は第三セクターの秋田内陸線・阿仁前田温泉駅のメロディーとして昨年1月から流れている。また今年7月に秋田県小坂町で開催予定の、日本産ワインコンクールの応援歌をつくる予定もあるという。小坂町では山ブドウを原材料とするワインを製造しており、コンクールは全国から同様のワインの出品を募る「おそらく日本初の開催」(小坂町)だ。「秋田を盛り上げることに貢献できれば、こんなにうれしいことはないですね」と2人は口をそろえる。

 ともに還暦を過ぎ、時間に余裕ができてきたことで今後は音楽活動を増やしていきたいという。楽曲は配信サービスのレコチョク(https://recochoku.jp/artist/2001265445/)で購入できるほか、FM秋田で「ダックスムーンのランチde’ポップス」(毎週土曜12時~12時25分)というレギュラー番組を持っている。

 ※元産経新聞経済部記者、昭和女子大学現代ビジネス研究所研究員。「乗り鉄」から鉄道研究家への道を目指している。著書に「釣りキチ三平の夢 矢口高雄外伝」(世界文化社)など。


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