【道標 経営のヒント 341】サービスエンカウンターのコントロールがサービス向上の鍵 福島規子


 企業が提供するサービスと顧客が接する「場」のことをサービスエンカウンターと呼ぶ。

 サービスエンカウンターには、レストランのサービス提供者と来店客といった対人接客だけではなく、銀行のATMやアプリによる宿泊予約のように人が介在せず物質的機能だけで成立する場合もある。

 ここにはサービス提供者と顧客が共に場を創り上げていく「共創概念」が存在する。

 たとえば、アパレルショップでシャツを購入する場合、顧客は自身の好みを店員に伝え、店員は顧客の要望にあわせて複数の商品を提示し、顧客が納得のいく商品を手にするまでやりとりが続く。店員と顧客が共に協力しあいながらお気に入りの1着を見つけるための「場」が、対人接客におけるサービスエンカウンターなのである。

 一方、ネットショッピングでも、最近では購入履歴や閲覧履歴から顧客の好みや傾向を分析するだけではなく、「同じ商品を購入されたお客さまはこのような商品をお買い求めです」と他人の購入履歴を挙げ、お勧め商品を提示してくれる。AIの進化により、機械によるサービスエンカウンターも、対人接客並みに進化していると言えよう。

 ところで、シュレンジャーらの研究によるとサービス業従事者の従業員満足度は三つの要素によって、その70%が支えられていることが明らかになっている。一つ目はサービス活動の自由が確保されていること、二つ目は自らの権限でサービスを提供できること、そして、三つ目はサービスに必要な知識と技術を備えていることである。サービス提供者は、常に、サービスエンカウンターを自分でコントロールしたいと考えていることから、従業員満足度を支える3要素はサービスエンカウンターをコントロールする上でも重要な意味を持つ。

 たとえば、某旅館では食後のデザートをアイスクリーム、カボスのシャーベット、みつ豆の3種類の中から選んでもらうのだが、接客係は自身の判断と権限によって自由にアレンジしたデザートを提供できるようルール化されている。アイスクリームとシャーベットのいずれかで悩んでいる顧客には半分ずつ器に盛り込み、みつ豆を選んだ顧客にはアイスクリームをのせてクリームあんみつにもできることを提案する。

 サービスの自由度が組織によって保障され、自身の権限で、一定の基準を満たしたデザートを提供できることは、従業員満足度を向上させるとともに、顧客にもサービスの創出に参加していることを実感させ、顧客満足度向上につながる。

 対人接客サービス向上の鍵は、サービスエンカウンターのコントロールにある。コントロールできる環境を整え、状況にあわせて自身の判断でサービスを提供できる従業員育成に尽力したい。

 
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