【道標 経営のヒント 324】持続可能な建築とは 佐々山 茂


 最近の建築材料は質が高い。プリント技術とデジタル技術が合わさり、木目調シートは見ただけでは本物と区別がつかない。塩ビシート、メラミン板、アクリル樹脂があふれ、畳はイグサからパルプに取り替わる。工業製品はツルッとしていて均一で何よりもクレームになりにくいのがメリットで、自然素材は同じ材料でも色も模様も違い、ざらついた肌触りで不均一だ。木は節があり、竹は曲がり、石は節理がある。

 建材は価格が決まっていて調達も早いが自然素地は探すところから始まり、金額もはっきりしない。内装のプレゼンボードにはサンプルと製品番号が並び、資本主義経済では合理性が優先される。住宅は車や家具などと同じく工業製品化し、かやぶきの民家とは対極にある。

 人々は行き過ぎた都会化から逃れて癒やしを求め、自然を求めて旅に出るが、お迎えする宿は都会の建物のように工業製品であふれている。

 知り合いの棟梁は材料の目利きで無垢材を安く仕入れ、上手に使ってくれたが70歳を過ぎて引退し、仕方なく取り扱いやすい集成材で造ることになった。インテリアと外部の自然が行き来するようにしたいと思い、地元の素材を探し回っていると、技術を持った職人に出会うことがあり、自然素材の扱いに優れた人を大切にしたいと強く思う。

 予算がないときでも家具や照明器具を地元の素材で作ることを心掛け、今も数カ所の現場でその地の風景や素材からヒントを得て照明を試作している。トチの板を組み合わせたテーブルランプやブラケットライト、木の枝を組み合わせたシャンデリア、和紙を巻貝風に巻いたペンダントライトなど、全て空間に合わせてゆったりと作る。クライアントと作る過程を共有することで一つの物語にもなる。建築は新しいときが一番で、経年劣化して価値が下がるといわれるが、自然素材は経年変化で味が出るので持続する。

 建築の仕事は法規、予算、工期など合理的に決まることが多いが、外部空間との関係、自然素材の生かし方などゼロとイチで評価できない、言い換えれば文化ともいえる面が大切と思う。

 持続可能な建築は、消費されるようなインスタ映えでなく、その地の景観と呼応して、そこで過ごす人の心に響く場、人に愛される場になることで達成される。そのような場を目指すには、人知れず思いを入れて造るしかないと思っている。

 
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