【道標 経営のヒント 319】「世界」に売り込め 宮坂 登


 1年前から海外のecサイト(電子商取引サイト)への出品を考えるベンチャー企業の相談に乗っている。コロナ禍でインバウンドが霧散した今、こちらから海外に乗り出して商品を売り込もうという試みだ。宿にも将来的にそんなグローバルなニーズがあるかもしれないので、ノウハウの集積に努めておこうと思っていた。

 話を戻そう。実はその商品は明確な効果があることが分かっている特許製品であり、ベンチャー側はサプリメントとしての販売を考えている。そのecサイトの登録者数は10億人を超えるが、データなどによるとその約3割がサプリメントのニーズに適合する。海外のecサイトはクレジットカードからの課金で、誰もがスマホでピッ、とカンタンに商品を買う。既にecサイトとも協議を終えていて、商品を出品することを正式許諾されている。担当者もネットで商品が話題になれば登録者数の多さに比例して爆発的に商品が売れるだろうと、乗り気である。

 とはいえ、出品前にクリアしなければならない問題が山積みだ。プロジェクトは複雑で、まず、商品の安全性を裏付けるエビデンスづくりを行わなければならない。安全性については既に日本有数の検査機関からのお墨付きは得ているものの、さらに国立大学の研究室や日本を代表する研究機関に依頼してエビデンスを集積してもらっている。製造・精製工程は日本トップレベルの技術を持つ有名企業の力を借りているが、大量生産する上ではそれぞれに製造ラインを確保してもらわなければならない。そのためにはどのくらいの販売数を見込んでいるのかの見極めも必要になるのでマーケティングやリサーチも必須だ。

 製品完成後は製品パッケージづくりや、エビデンスをもとにした製品解説書の制作が待っている。代理店候補が内外で5社ほどあるので多言語でのセールスツール制作も必要になる。ホームページの制作やネット上でのPR、マスコミ対策などの準備も始めなければならない。

 日常業務では、これら全ての項目を一元管理し、毎日目を配り、どんな遅れもトラブルの種も見逃さずに業務を遂行していく。内容管理と進行管理、原価管理の厳格なコントロールが何よりも必要になる。

 そんなことを考えていたときに偶然、ある宿から連絡があった。コロナ禍でにっちもさっちもいかないので、活路を求めて海外で製品を売り出したいそうである。かなり有望な商品であり、販売がかなえば大きな実入りも望めそうである。さっそくecサイトにつなごうと考えている。

 
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