
先日、ある輸入商社を取材させていただく機会を得た。サステナブルなカカオ豆を輸入する第一人者「立花商店」である。ネットで、個人が少量でカカオ豆を購入することができる仕組みを構築し、“ビーン・トゥ・バー”浸透を支えた立役者としても知られる。
彼らが、実際に足を運んだカカオ豆生産地の中から、二つの国の話を紹介したい。
一つは、ガーナ。幼い労働力の搾取が問題になっている。家の手伝いで、学校へ継続して通うことができない子どもたちが多いのだ。最近は、児童労働撤廃のために活動する認定NGO法人「ACE」の尽力で、成果も出てきている。立花商店は、このACEが支援するカカオ農家に、適切な応援金を払って高額でカカオ豆を買い上げサポートしているのだ。
「ガーナは、1年に1度、政府が買い付け価格を決め、品質の良し悪しにかかわらず、同額で買い上げる。それを、ガーナ政府から購入の免許を与えられた商社だけが、支給される豆をそのまま購入するという基本の取引ルールがあるため、特定の農家との直接取引は、簡単ではないのです。政府と交渉を重ねた末、3年ほどかかって、やっと実現しました」と立花商店は言う。
もう一つは、フィリピン。立花商店は、ここにアジアでの品質のよいカカオ豆産地を確立する将来性を感じている。
「ドゥテルテ大統領が就任した際に、自身の出身地であるダパオの産業であるカカオ豆栽培に力を入れると明言したことに希望を感じました。フィリピンでカカオ産業が盛り上がれば、アジアのカカオ栽培が発展すると手応えも感じています」。
日本でも、アジアに生産工場を持ちチョコレート作りを行う企業は多いのに、原料は遠いアフリカから輸入する矛盾。後に、供給が難しくなった際に行き詰まるリスクも考えて、フィリピンで希少品種であるクリオロ種のカカオ豆を栽培するサポートを始めた。
「ただし、土地が貧しいアフリカと比べて、フィリピンは他にも栽培できるものがたくさんある。だから、高く売れないと、すぐに他の作物へ転換してしまうんです。品質がよくなければ高く売れないことを教育する必要がある。そういうことを分かっている人が所属する団体と共に、積極的に活動していきたいと思い取り組みを始めたところです。収穫は、2023年を予定しています」。
チョコレートは、ホテルやレストランのホスピタリティを表す上でも、大切なキーアイテムである。せっかくなら、幸せな未来を創る手伝いができる原料で作ったチョコレートでもてなすことができたら、素敵なことではないだろうか。