【道標 経営のヒント 305】熟達者の経験と勘をAIに 旅館業界も配膳ロボットの時代 福島規子


 株式会社すかいらーくホールディングス(本社・東京都武蔵野市)は、2022年4月までに「ガスト」や「しゃぶ葉」を中心に約千店でフロアサービスロボットを導入することを発表した。さらに、来年末までには「ガスト」全店舗を含む約2千店に同ロボットを配備する計画だ。

 導入の目的は「顧客満足度の向上」と「働きやすい職場環境」の二つ。

 配膳ロボットは一度に多くの料理を運び、下膳もサポートするためサービス全体を効率化し、結果として顧客を待たせずにサービスを提供することができる。同社が実験店で実施したお客さまアンケートによると約8割の顧客が「お客様を待たせないサービス」を高く評価したという(同社ニュースリリース10月18日付)。また、配膳ロボットとホールスタッフが作業を分担することで、ホールスタッフはテーブルサービスレストランならではの接客に集中できると、配膳ロボット導入の利点を挙げる。

 さらに、同社の配膳ロボットは上部に猫耳がついたスマートなデザインで、モニター画面の猫顔は表情豊かに顧客とコミュニケーションをとることもできる。顧客はチャーミングな配膳ロボットが運んできた料理を自身で取り出し、テーブルに並べる。だが、ここで提供されるのはあくまでロボットを媒介としたセルフサービスにすぎない。

 配膳ロボットに作業を振り分けることで、新人や外国人スタッフは決められた業務を集中して習得することができ、作業負荷の軽減は高齢者採用へとつながる。配膳ロボットの導入は、慢性的な人手不足を解消するための次の一手ともいえる。また、業界全体に配膳ロボットの導入が進めば、大量生産により配膳ロボットの価格は下がり、開発競争が激化することで、配膳ロボットの高性能化も期待できる。

 例えば、配膳ロボットに搭載されたAIが顧客情報に基づき顧客の好みの酒類や飲み方を判断し顧客に酒を勧める。また、顧客同士の会話あるいは酒や箸の進み具合から、食事のペースを解読しタイミングを見計らってサービスロボットが直接、厨房にオーダーを通せるようになれば、業務の効率化と顧客満足度の向上は一気に実現できるだろう。

 熟達した接客係の長年の経験と勘がAIに置き換えられ、サービスロボットが接客業務の一部を担う日は、そう遠くない未来に必ずやってくる。

 いま私たちがなすべきことは、ロボット導入を念頭に置いた設備投資やオペレーションの構築にいち早く取り組むことだろう。

 
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