【道標 経営のヒント 253】大型観光旅館の本気度 九州国際大学教授 福島規子

  • 2020年9月30日

 海沿いに広大な敷地を持つ大型観光旅館に宿泊した。

 食事は夕食、朝食ともにバイキング形式。料金はオールインクルーシブで1人当たり1泊2食3万3千円(2名1室利用)だ。併設された美術館の入館料やレストランやカフェでのドリンクなどがフリーになり、それなりにお得感はある。

 だが、客室備品はいただけなかった。ハンドソープはあるのにハンドタオルがなかったり、歯ブラシはあるけれど1度使っただけで植毛部がすっかり開いてしまったりと種類と品質には疑問が残る。ただし、衛生面でのこだわりは素晴らしい。

 例えば、個別包装された歯ブラシやヘアブラシ、コットンなどのアメニティは1人分ずつ袋に詰められ、館内着も1着ずつ透明なビニール袋に入れられてクローゼットに収納されていた。コロナ禍で感染対策が注目される中、同館の本気度を垣間見た思いである。

 本コラムでも業界団体が策定した「宿泊施設における新型コロナウイルス対応ガイドライン」を受け、「旅館の『新しいもてなし様式』としてバスタオル、フェイスタオル、浴衣、帯をひとまとめにジッパー付きのビニール袋に入れ、『お宿セット』として1人分ずつ用意することを提案したい」(5月30日付)と述べたが、すでに実践している宿があることは心強い。ほかにも下駄箱に滅菌用ライトを仕込むなど小ワザを利かせた衛生管理には脱帽する。

 ところで、同館の売りは料理人が顧客の目の前で調理するバイキングレストランである。オープンキッチンでは10名程の調理人がすしを握り、名物の牛タンやステーキを焼く。カウンター近くのテーブルには、小さな器に盛りつけられたごま豆腐や菊花なますがズラリと並ぶ。見るからにおいしそうだ。また、一方にはワインに合いそうなチーズやカルパッチョ、生ハムなどが殊更おしゃれに盛り付けられており思わず食指が動く。

 しかし、元を取ろうと原価率の高そうな高級ステーキの列に並ぶと目の前に「お1人さま3切までとさせていただいております」と立札。すしカウンターでは目当てのネタが品切れとツイていない。それでもステーキとマグロの握りを手に入れて席に着く。が、一つ一つはとてもおいしいのに、全く楽しくない。ほかにも目に留まった料理を食べてみたものの、食事としての満足感が皆無なのである。食べる順番を間違えたのだろうか。もしかしたら、食材の時季や調理法、食べる順序などを指南した「献立」があれば、もっと楽しいひと時を過ごせていたかもしれない。

 「肉とすしを出していれば間違いない」時代は間違いなく終わる。これからは、AIが顧客の事情に合わせて「バイキングで食べるべき料理の献立」を提示するようになるだろう。旅館バイキングもいよいよ次のフェーズに突入だ。

 
 
 
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