【道標 経営のヒント 199】ローカルな冒険をするホステル タグ広告プランナー 宮坂登


 夏のハイシーズンを迎え、旅館・ホテルの皆さまも多忙な日々を過ごされていると思う。つい2週間ほど前に鎌倉に出向いたが、曇天続きで由比ヶ浜のビーチ沿いに建ち並ぶ海の家も当然閑散としていて、観光客数よりも海の家のスタッフの数の方が多い状況だった。

 一転して街中は観光客、特に中国や台湾からの観光客でごった返していた。小町通りなどは人をよけながら歩くのに精一杯である。鎌倉を訪れた目的は、近頃話題を呼んでいる山形そばと日本酒のバーを併設したホステルを訪ねることにあった(プライベートでは鎌倉野菜と湘南の鮮魚を買うことも目的だが…)。古都京都には多数のホテルや旅館、町家があるのに、関東の古都鎌倉では今までなぜか宿泊施設の話題が少ないように思っていたところ、独自コンセプトのホステルが人気を集めていると聞いて自分の目で確かめてみようと思ったからである。

 そのホステルへは鎌倉駅から歩いて10分もかからない。古い蔵をリニューアルした建物の1階には山形名物の「つったい肉そば」や「鳥中華」「だしごはん」などのローカルフードや地酒を提供する「SOBA BAR」があって、一見、ホステルとは思えない。客室は2階に数室。内装は鎌倉をはじめ、逗子、葉山など地元湘南で活躍するクリエイターたちが集って造り上げたと聞く。モダンというより、今まで見たこともないような空間が形づくられている。

 コンセプトも面白い。「僕らは夢を食べて旅をする。古今東西、老いも若きも、アクティブな人ものんびりやさんも、つくる人も、描く人も、料理人も、食べる人も、飲む人も、歌う人も、おしゃべりな人もシャイな人も、地元の人も外国人も、初めての人も常連さんも。いろんなものが混ざり合う。渦巻く熱とざわめきと、そこから生まれる、予想を超えた新しい体験。混ざり合うワクワク。ここは、ローカルな冒険をするホステル」とある。

 そこにはかつてのユースホステルのイメージはなく、現代の旅する客が求めるある種の「満足」があるようにも思えた。「ただ泊まるだけではない、何かがある」と。このプロジェクトは鎌倉を拠点に建築、不動産、町づくりのプロデュースを行っている会社の手によるものだそうだが、大がかりな空間ではなくともこんなことができるんだと感服した。ホステルと旅館・ホテルとは違うが、客を楽しませるという意味では差はない。広告マンとしてもいろいろ思うところが多い体験だった。強みを持たない宿にとってもきっとヒントになるのではないか、と。

 
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