【道標 経営のヒント 152】温泉に感謝しよう 佐々山建築設計社長 佐々山茂

  • 2018年8月9日

 有名温泉地の旅館での話だが1分間6リットルの源泉量で男女大浴場をまかない、それからのオーバーフローで複数の貸し切り風呂を源泉掛け流しとうたっている。これは極端な話だが、最近温泉旅館を調査する機会が多く、大変良く管理されている施設がある半面、本当に温泉なのかと疑うような施設があることも事実だ。

 レジオネラ菌の検査は結果がはっきりするためきちんと行われるが、温泉の質に関しては意識が低く、温泉量と浴槽の湯の質について把握していないことが多い。湯の取り替えが月に1回と知れば湯上がりに十分シャワーを浴びるし、また来たいと思わない。

 湯の質についての良い例を四つ紹介すると、(1)湯守ともいえる経営者が、決して多くない源泉を神の手ともいえる手際で毎日複数の浴槽を調節して「源泉掛け流し」の素晴らしい温泉を提供している(2)39度の特徴ある良質な源泉がある旅館が今まで全量加温循環ろ過していたが、一つの浴槽を加温しないで「源泉掛け流し」にしたら温泉の効能が際立ちお客さまに褒められた(3)加水をやめ、真湯による湯張りをやめて、源泉だけの循環ろ過にしたところ温泉の質が良くなりお客さまから褒められた(4)今まで加温循環ろ過であったのを、加温も循環もしないで完全換水と清掃などの運用管理の工夫で「源泉掛け流し」にした。温泉の質は良くなり、油代も電気代も掛からない。

 雑誌やテレビで「源泉掛け流し」の温泉がもてはやされているが、温泉の量、温度と浴槽の大きさがつり合うなど一定の条件が必要で、その上に毎日湯を換えての清掃が必須となる。そんなことにはお構いなしに「源泉掛け流し」とうたえば無理が生じ温泉の質が悪くなる。中途半端な掛け流しよりも、きちんと循環ろ過した方が安心安全な浴槽になる。

 近年の観光ブーム以前の温泉は源泉の量と温度に見合った大きさの浴槽であったのが、施設の大型化に合わせて無理に大きな浴槽を作ってきた。その上、個人客向けに露天風呂、貸し切り風呂、客室付き露天風呂と浴槽の数を増やした。個々の浴槽ごとに温泉の量と質を管理して初めて胸を張って温泉旅館といえるが、今ある温泉量の能力を超えて浴槽を増やした結果が今の状況を作ったといえる。

 温泉は自然の恵みで公共財ともいえる有限な資源であり、温泉の魅力は温泉地の魅力につながる。自然への感謝の気持ちをもって温泉を活用したいと思う。

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