【道標 経営のヒント 148】地酒をたしなむ食事処 佐々山 茂

  • 2018年7月12日

 評判が良いと聞いて大手旅館チェーンの新築旅館に行った。ビュッフェ会場は動線が良くオープンキッチンでの調理の様子がお客さまから見えるし、ビュッフェ台内部にも冷蔵庫があり、料理は常に補充されて盛り付けも美しい。特別料理が3種からチョイスできて運んでくれる。

 しかし2人テーブルを合わせた6人席に案内され、インカムを付けた女性スタッフに食事は1時間30分以内でお願いしますと言われあぜんとする。近くには赤ちゃん連れの家族客もいるし、時間が気になりゆっくりお酒を飲む気にならない。リゾートよりもファミレスで食事をしている気分。ビュッフェ会場は難しい。

 旅館の食事は問題が山積みだ。1泊2食の団体用の調理システムが根底にあり、調理場と食事会場が離れているところが多い。15時ごろから仕込みと調理を始め、提供するまで3時間ほどかかる。運搬距離が長いと調理とお客の間に無駄な労力、時間、エネルギーが必要で、下げ膳と洗浄にも無駄な労力が掛かる。出来たてや質の良い料理を提供するには限界がある。

 食事時間にも問題を感じる。ホテルでは17時30分ごろから何回かに分けて食事をスタートさせ、終わるのが21時ごろ。コース料理を的確に出し、アルコールをたしなむ余裕もとり、営業時間は3時間から4時間。それに比べ旅館は食事を一斉に始める傾向が強く、6時30分から8時30分の2時間程度でそそくさと終える。

 一斉に始めるよりも時間差を設けた方が上質なもてなしが可能だし、場合によってはスタッフの人数も減らせる。会場を1.5~2回転すれば、席数も少なくなり、空間に余裕が生まれる。また配膳スペースが減り、厨房もコンパクトになる。

 今、計画しているのは朝、昼、夕、夜と4回転させる食事会場。調理場とホールは調理長がお客の様子が分かる距離とし、食器洗浄も併設する。食材管理、食器の洗浄保管まで調理に関係する仕事を一括管理することでお客さまの満足と生産性向上が両立する。最後のお客が帰ったあと1時間で食器洗浄も、調理場の清掃も終わりたい。

 食事は旅の中で一番の喜びで、雰囲気の良いところでゆっくり食事ができれば旅に対する満足度は上がる。私にとって食事に行こうはお酒を飲むと同義語で、旅館でもおいしい地酒をたしなみながらゆっくり和食を味わいたい。時間を掛けて食事をする雰囲気を作れば消費単価は上がる。インバウンドにも、滞在型にも対応できる食事会場を模索している。

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