エアビーアンドビーは14日、東京都に対して意見書を提出した。東京都の住宅宿泊事業の実施運営に関するガイドラインへの意見の募集に応じて提出したもの。
同社によれば、意見書の中で、ホームシェアリング(いわゆる民泊)を含む住宅宿泊事業がもたらす地元の観光資源の発掘、地場経済の活性化等のメリットを訴えるとともに、東京都が定める条例が、住宅宿泊事業の担い手となる一般個人にとって正確に理解し、義務を履行できる現実的なルールになることを目指した方策を提起しているという。
全文は以下の通り。
2018年2月14日
Airbnb (エアビーアンドビー)
東京都産業労働局観光部振興課住宅宿泊事業調整担当 御中
「住宅宿泊事業の実施運営に関するガイドライン案(概要)」に関する意見
Airbnbは、住宅宿泊事業法を、日本のニーズを反映したシンプルでわかりやすく現実的な法律であると考えています。Airbnbのユーザーにとって、日本はアジアで最も人気の旅先です。住宅宿泊事業法の成立は、日本のホストコミュニティ、これからホストになりたいと考えている方々、そして何より旅行者にとって喜ばしいニュースになりました。
Airbnbは、住宅宿泊事業法の施行に向け、同法に従い観光庁へ登録し、法令遵守のために必要な対応を随時実施いたします。住宅宿泊事業法が施行される6月15日以降、日本国内の物件をAirbnbのプラットフォームに掲載継続するには、届出番号、あるいは、その他ホスティングを行うための許認可などの記入が必須となります。地域社会に配慮し、ホームシェアを含む住宅宿泊事業が持続可能なかたちで日本全国に普及するよう、引き続き、日本政府、地方自治体、ならびに関係者のみなさまと協働してまいる所存です。
諸外国の都市との連携の例にはなりますが、これまでも、Airbnbは、企業の自主努力として、地方自治体への匿名化データの共有、行政への登録を容易に行えるようにする「パススルー登録システム」、オンライン上の相談窓口である「ご近所様相談窓口(Neighbors Tool)」、ビル所有者や大家らが利用状況を容易に管理できる「フレンドリービルディングプログラム」、宿泊税等の代行徴収・納付システム等の行政サービスのお手伝いをさせていただく仕組みを開発してまいりました。Airbnbは、東京都においても、関係者のみなさまのご意見を伺いながら、ホームシェアの健全な発展のために努力してまいりたいと考えております。
Airbnbは、東京都が「セーフシティ」、「ダイバーシティ」、「スマートシティ」の三つのシティの実現を目指して、東京の持つ無限の可能性を引き出す取組みを積極的に推進されていることに敬意を評します。東京都における「住宅宿泊事業の実施運営に関するガイドライン案(概要)」が、東京都民、ならびにホストとゲスト、それぞれのニーズを反映した、シンプルでわかりやすく現実的なルールになることを期待し、以下のとおり意見を提出いたします。
1.ホームシェアは、観光業の拡大・多角化につながるほか、ダイバーシティの実現に寄与します。東京2020大会の成功に向けた取組やダイバーシティの実現のための政策を進める中で、ホームシェアの活用もご検討いただくようお願いいたします。
観光客のニーズが多様化し、求められる観光のかたちも変化してきています。Airbnbのユーザーにとって、日本はアジアで最も人気の旅先であり、また、東京は1番の人気都市になっています(弊社の2018年上半期予約データ)。この点で、ホームシェアは、東京に大きな可能性をもたらすと考えます。事実、過去1年間(2017年1月から2017年12月)で、約189万人がAirbnbを通じて東京都を訪れ、1 人あたり平均約4日間Airbnbを利用し、観光業を拡大・多角化することにも繋がっています。
ホームシェアが日本全国に広まると、以下のように、多岐にわたる便益を中長期的に生み出すことになると考えています。
● これまでも世界各地で誰もが簡単に経済の担い手となり、個人の経済規模を底上げしてきました。一般個人にとって一番の出費であることが多い住宅を活用すれば、食費や家賃、子どもの教育費などに充てる副収入を生み出すことができます。ホストは住宅をシェアする価格としてAirbnbに掲載した金額の97%を収入として受け取ります。シニアを含め個人が経済的な力をつける機会を提供しており、「ダイバーシティ」の実現のために「人」が輝くための施策を重点的に展開する東京都庁の政策にも貢献できるものと考えております。
● Airbnbは、観光業による便益を地域に住む住民の方々と共有できる仕組みを作ってまいりました。Airbnbに掲載されている物件のおよそ4分の3は主要なホテル街から外れた場所にあります。すなわち、従来の旅行では目にすることがないような街やエリア、そしてそこに住む人々と出会うことができます。また、通常は観光収入に恵まれないコミュニティにも経済効果をもたらすことができます。
● 各国の政府に宿泊税等の追加の税収をもたらしています。現在、世界各地で公共サービスの拡充が課題となっていますが、著しい財政難に直面している都市では、ホームシェアが生み出す税収によってその負担が幾分か軽減できます。
また、2008年の創業以来、Airbnbは2015年のローマ教皇フランシスコのフィラデルフィア訪問や2016年リオ夏季オリンピック大会といった数々のイベントで、各都市における宿泊施設の整備を支援してきました。国際的、全国的なイベントの開催時に、Airbnbが宿泊施設の迅速な整備を支援し、都市の最大の資産である“人びと”にスポットライトを当てることができると考えています。
● 2016年リオ夏季オリンピック大会では、代替宿泊施設公式サプライヤー(official alternative accommodations supplier)としてオリンピックで初めて、ホームシェアを提供しました。世界経済フォーラムおよびマサチューセッツ工科大学がAirbnbのデータを利用して実施した調査によると、リオ大会中に同市を訪れた推定50万人の旅行者うち8万5,000人が4万8,000件のAirbnbに登録された宿泊施設を利用しました。これらの施設の多くはオリンピックのために整備されたものです。同調査によると、このときのAirbnb利用客と同数の旅行者に対応するためにはリオで257件のホテルを建設する必要があったとしています。
● 2018年平昌冬季オリンピック大会では、公式サポーター(Official Supporter)として、オリンピックが開催される江原道地域を訪れる旅行客に宿泊施設を提供し、江原道独自の文化や美しい自然を国内外からの旅行客に発信しています。期間中、江原道のAirbnb物件に泊まる旅行者の数は国内外合わせて合計9,000人以上となる予定です。これは昨年同期に比べ260%(約3.6倍)の増加となります。ホテルなどの既存宿泊施設の多くが満室となる中、これによって中規模のホテル28棟分にあたる客室4,500室分が補充されたことになります。オリンピック開催期間中の宿泊で現地ホストが手にする収入は合計約2.3億円で、1人平均約28,000円となる計算です。
以上のように、ホームシェアは、観光業の拡大・多角化につながるほか、ダイバーシティの実現に寄与するものと考えています。東京2020大会の成功に向けた取組やダイバーシティの実現のための政策を進める中で、ホームシェアの活用もご検討いただくようお願いいたします。
2.一般個人が対応できるよう、わかりやすくシンプルなルールの作成、周知をお願いいたします。
住宅宿泊事業が普及すると、企業以外の一般個人が、観光の担い手として活躍します。老若男女が安心して新たな経済機会に参加できるよう、個人情報やプライバシーの保護を徹底し、かつ、日常生活の延長で法令遵守ができるルールの策定・周知をお願いいたします。
以上