【逆境をチャンスにー旅館の再生プラン 670】行政との新たな関係性の作り方〈1〉 青木康弘


 観光業は地方創生の重要な柱であり、その振興には地方行政とのパートナーシップが不可欠である。しかしながら、理想的な関係が築けていない地域は少なくない。観光事業者は、行政に対して期待通りの動きをしてくれないと不満を募らせている。一方、行政側は、民間からの要望に全て応えることは難しいと考えている現実もある。今回コラムでは、地方行政との円滑なパートナーシップを構築し、地域活性化を進めていくための戦略について紹介したい。

 (1)観光行政組織への提案

 観光行政に民意を反映するために、地域の旅館・ホテル、観光団体、飲食店組合、地域経済界、旅行業、交通機関、商工観光や都市計画に関する行政担当者を集め、協会や委員会、協議会、コンソーシアムと称して、意見聴取を行うことが一般的だ。この仕組み自体は問題ないが、運用方法を間違えるとうまくいかない。

 例えば、協会などの会長ポストに地域金融機関や大手企業のトップが名誉職として就いているケースだ。地域観光を推進するリーダーとして、大胆かつ特色ある施策を示すことが期待されるが、観光の専門知識がない多忙な経営者が職責を果たすのは難しい。結果として、行政の保守的な担当者が実質的な権限を持つことになり、行政主導で民意が反映されにくくなってしまう。

 意見具申してもらうのは、行政の担当者も嫌がり、効果が薄いので、トップダウンで働きかけすることをお勧めする。市長や知事、地方議員に対して、どのような組織体制・運用が望ましいのか、他地域の成功事例に基づき示すと良い。行政が前例に基づきブラックボックスの中で人選するのではなく、公募制などを導入することで民間の声を反映させる工夫も提案したい。

 製造業が盛んな地域では観光への取り組みが後回しにされがちで、観光事業者の声が届きにくい状況が見受けられる。このような場合には、地域の有力企業に観光業の活性化について協力を求めることが有効である。彼らが地域観光パートナーシップに参加することで、その取り組みが一部の観光事業者だけでなく、地域全体のものと認識されるようになる。

 (アルファコンサルティング代表取締役)

 
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