【逆境をチャンスにー旅館の再生プラン 659】連泊型旅館への転換〈6〉 青木康弘


 前回に引き続き、高単価の連泊客に選ばれる施設になるためのポイントを紹介したい。施設の高付加価値化やインバウンド個人客の集客を進めていくにあたって、今後取り組みを強化したいのが連泊客への対応である。これまで旅館は連泊客の対応を苦手としていた。しかし、旅先での過ごし方が大きく変革するなかで、1泊2食の運営形態に固執しすぎるとお客から選ばれなくなる可能性があるため、今のうちから改革を進めていこう。

 (7)PR活動とプランの工夫を行う

 連泊客の増加を目指し、高額の設備投資を行っても、連泊を好む顧客層に知ってもらえなければ、売り上げの安定化にはつながらない。連泊旅行者向けのPR活動を積極的に展開しよう。残念ながら、「連泊」というキーワードは認知度アップには適していない。web検索ボリュームが月間100から千と少なすぎるためだ。同様に「ロングスティ」「長期滞在」「滞在型」といったキーワードもweb検索ボリュームは非常に少ない。検索エンジン上でリスティング広告を出しても効果は薄いだろう。まずは、OTAや旅行代理店をフル活用するのが賢明だ。

 プラン造成にあたって留意すべき点はいくつかある。まず、食事の柔軟性を高めることだ。例えば、2泊4食プランというのは宿泊施設側にとっては、手配が容易で売り上げの最大化が図れるメリットが大きいが、宿泊者の自由度が小さく選ばれにくいデメリットがある。さまざまな料理ジャンルのそろったリゾートホテルを除いて、宿泊者の立場からすると2泊目は地元の名店で食べたいというのが本音だ。素泊まりや朝食付きプランで予約を受けて、2泊目以降の食事は現地で予約を受けるという方法が歓迎されるだろう。

 次に、プラン名を工夫することだ。連泊はお得であると表示している施設は多いが、1泊のプランと比べてどの程度お得なのか分かりにくく、予約獲得につながっていないケースが多い。具体的に15%オフ、20%オフと明示するのが良い。宿泊者は施設の適正価格を判断できず、旅行予算や口コミ、写真の印象で価格とのバランスを感覚的に捉えている。割引率を明示すれば、お得感を具体的に理解してもらいやすくなる。

 最後に、滞在時の不便を感じさせないよう特典を提供することが重要だ。連泊時に頻繁に買い出しに行かなくても済むように、オールインクルーシブ形式にしたり、貸し出し備品を充実させたりする工夫が喜ばれるだろう。

 連泊客を増やすためには、PR活動やプランの工夫だけでなく、宿泊者が快適に過ごせる環境を整えることが不可欠だ。そのためには、食事の柔軟性や割引率の明示、滞在中の不便を軽減する特典の提供など、さまざまな面での配慮が求められる。これらの取り組みによって、連泊客の獲得と売り上げの安定化を図ることができるだろう。

 (アルファコンサルティング代表取締役)

 
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