前回に引き続き、有望とされる多角化分野を取り上げて収益アップを図る方法について紹介しよう。旅館・ホテルの稼働率は復調傾向にあるものの、中期的に見れば、インバウンドや高付加価値旅行を除き、宿泊旅行市場は縮小すると見込まれている。国内観光客をメインターゲットとした宿泊施設や観光施設は、既存事業にとどまらないさまざまな収入源を確保しておくことが望ましい。
皆さまの施設の立地が良ければ、多角化の手段としてテナント誘致を行うのも一案。旅館・ホテルと親和性の高い業態やサービス店舗を導入できれば施設全体の魅力が高まるだろう。典型的なものはコンビニであるが、他施設との差別化を図るため、幅広い業態を対象とすることをお勧めする。
テナント誘致により期待できる賃料は、施設の立地や面積、ビルの形態、出店する店舗の業態により異なる。全国の賃料平均は、日本ショッピングセンター協会が毎年公表している「SC賃料・共益費」という調査に詳しい。
例えば、小都市・町村(人口15万人未満の都市)に立地する商業ビルの場合、月当たり坪賃料は、物販店舗9504円、飲食店舗1万5268円、サービス店舗8089円、共益費は1556円となっている。賃料交渉を行う場合には、このような業界水準を目安に行うと良いだろう。
家賃の形態は、固定賃料、変動賃料があり、変動賃料に家賃の最低保証をつけることがある。不動産保有者は固定賃料が良いと考える方が多いが、業態によっては変動賃料が主流のケースもある。固定家賃にこだわりすぎると優良なテナントを誘致できなくなるので、変動家賃も選択肢として考えておいた方が良い。
提示される賃料は、テナントの集客力によって大きく異なる。小規模店舗であれば変動賃料は売り上げの8%から10%が目安になるが、集客力のある著名な店舗だと売り上げの3%と低い水準で提示されることがある。化粧品や専門店の場合、実質的な月当たり坪賃料が2万円を超えることは珍しくないが、大規模の雑貨店の場合3千円を下回ることも珍しくない。多くの面積を借りてくれるからといって、皆さまの施設にメリットがあるとは限らないことに留意したい。
(アルファコンサルティング代表取締役)