【逆境をチャンスにー旅館の再生プラン 647】2023年に取り組むべきこと6 青木康弘


青木氏

 前回に引き続き、困難な状況を乗り越え、施設を再興させるために2023年に取り組むべきことを紹介したい。新型コロナが流行を始めてから4年目になろうとしている。全国旅行支援により観光地は活況を取り戻しつつあるが、新型コロナの再燃や政府の政策に翻弄(ほんろう)され道標を見失っている旅館・ホテルは少なくない。

 (6)地域資源を異業種と磨き上げる

 全国的に露天風呂付き客室への改装など、施設の高付加価値化が進んでいるが、集客力を高めるための地域ぐるみの取り組みが遅れている観光地は少なくない。地元の狭い世界にいると気づきにくいが、少子高齢化の中で熾烈(しれつ)な観光地同士の集客競争が起こっている。商圏や施設のグレードは類似していても、観光地によって集客力は雲泥の差だ。

 リゾートホテルやコンセプトホテルなど宿泊施設を目的地とする一部の旅行を除き、大半の観光客は、まずどこの観光地に行くかを決め、その後に立地やグレード、コンセプトなどを基準として宿泊先を選択する。観光地として選ばれなければ、いくら立派な改装をしても投資回収するための集客はできない。

 閑散期対策として祭りやイベント開催をする策もあるが、地元施設の負担は大きい。イベント目当ての観光客で一時的に稼働は高まるが、実行委員会へのスタッフ動員を求められる。人手不足に悩む施設が地元の祭りやイベントへの開催に必ずしも積極的になれないのは無理もないことだ。

 安定的に観光客に来てもらうためには地域そのものの魅力を高めていくことが大切だ。具体的には、地域の強みとなりうる素材をピックアップして、訴求できるレベルまで高められるか検討する。歴史や町並み、著名な人物、景色、アクティビティなどを売りにするのが定石であるが、そういった資源がなくても問題ない。地元の人にとって当たり前のように感じる日常風景や料理、地元の言葉、古い生活習慣などが観光資源として魅力的なものになる。

 宿泊施設だけで、このような資源を育てていくのは不可能だ。異業種で観光振興に協力的な企業や団体、他地域から観光業への新規参入を検討している若いベンチャー企業経営者と連携して進めていくことが望ましい。

 (アルファコンサルティング代表取締役)

 
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