【逆境をチャンスにー旅館の再生プラン 625】新型コロナ対策の功罪4 青木康弘


青木氏

 売り上げ利益向上を目指していくに当たって今後懸念されるのが、宿泊単価、消費単価の乱高下である。新型コロナ流行による行動制限が続いた一方で、カンフル剤として導入されたGo Toトラベル、県民割によって宿泊料金は、地域相場や施設のグレード、シーズナリティに関係なく、大きく変動することになった。自社の客室単価はいくらが妥当なのか分からなくなってしまった経営者は多いだろう。

 価格を維持しようとしても、地域の相場が大幅に下落すると追随せざるを得ず、前例のない値下げに踏み切った施設は少なくない。特にインバウンド客が多く、宿泊施設が乱立した地域は、そのあおりをいまだ受けているのが実態だ。

 政府による割引キャンペーンを期待する経営者は多いが、効果は時期限定のものである。その後の先行き見通しは明るいものとは言えない。特に国内の中間層やシニアをターゲットにしてきた施設は収束後も苦戦する可能性が高い。コロナが流行した、この数年間も実質的な国民所得は減少を続け、人口も減少が止まらない状況が続いているからだ。コロナが収束してもこのトレンドが変わることはない。

 皆さまの地域の強みや弱み、どのような観光客を集客しようとしているのかは、自治体が作成している観光基本計画を見れば明らかである。今後のトレンドを知る手がかりになるので、熟読したことがない方は一度手にとってよく見てほしい。

 基本計画の目標に掲げている観光客数の伸びが小さい自治体は、近い将来に客室余りが発生するリスクがある。減室して客室のグレードアップを図ることをお勧めする。観光客数が減少しても付加価値が高く、人気の高い施設は周囲のトレンドに関係なく高稼働を維持できるからだ。

 一方で、観光客数の大幅増を目標に掲げている地域は、空港や港湾、鉄道の拡張など1次交通の整備を計画しているケースが多い。自治体が獲得しようとしているターゲット顧客に合わせて、増築や改装を検討するのが良いだろう。

 (アルファコンサルティング代表取締役)

 
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