【逆境をチャンスにー旅館の再生プラン 623】新型コロナ対策の功罪2 青木康弘


青木氏

 前回に引き続き、新型コロナウイルス対策による弊害と対策について説明したい。旅館・ホテルではガイドラインにそってさまざまな対策を行い、時短や休業に取り組んできた。しかし、夏休みを控え、稼働率が上昇傾向にある現在では、クレーム発生、口コミ評価低下につながるリスクにもつながっている。今一度、体制を立て直し取り組んでいきたい。

 緊急事態宣言などの行動制限もなくなり、旅館・ホテルの営業は通常に戻りつつあるが、スタッフのトレーニング不足が散見される。これまでおもてなしを強みとしてきたが、その基盤が揺らぎつつある。

 大きな要因はベテランスタッフの退職だ。コロナによる休業の長期化により先行きに不安を感じたスタッフの退職が相次いだ。加えて、雇用調整助成金が拡充されたことによりスタッフが働かない状態が長く続いた。清掃や作業のために時々出勤することもあったが、お客さまを迎えて忙しく立ち回ることはなかった。このような状態が長く続くと向上心の欠如した状態になりがちだ。

 コロナ休業中は多くの時間があったが、運営のレベルアップ、スタッフのスキルアップに徹底して取り組めた施設がどれだけあっただろうか。実際には失意の中でただ収束を待つ施設が少なくなかっただろう。

 このような状態が長く続いてきたが、今年の夏は初めて行動制限のない状況で書き入れ時に突入する。改めて自社のサービス体制に不備がないかチェックしたい。

 特に重点的に確認したいのが接客と清掃である。いずれも人の入れ替わりが激しかった部署であり、このまま繁忙期に突入するとお客さまサービスの低下、クレームの発生につながるリスクが高い。接客に関する外部研修を受けたり、ベテランの先輩社員が中途を含む新入社員に伴走しながら指導するブラザー制度を導入したり、外部の協力者によるミステリーショッパー(覆面調査)を実施したりなど取り組みたい。

 現場のリーダーは、スタッフとお客さまの間でどのようなことが起こっているか、よく目配せすることをお勧めする。新型コロナ流行前には当たり前のようにできていたことが今はできなくなっているという事態に直面したら、ただちに前述の対策を取り組んでほしい。

 (アルファコンサルティング代表取締役)

 
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