【逆境をチャンスにー旅館の再生プラン 598】2022年に取り組むべきこと4 青木康弘


青木氏

 前回に引き続き、2022年に取り組むべきことを紹介したい。2021年は新型コロナ対策に翻弄(ほんろう)された1年だった。早期の収束が期待されたが一転、回復の兆しも見えないまま1年が過ぎ去ってしまった。今年こそは逆境をチャンスに変える1年としたい。

 5、ミレニアル世代をターゲットとした設備投資を心がける

 昨年に引き続き、設備投資を対象とした補助金が各省庁から提供される計画となっている。老朽化が進む旅館・ホテルには業績改善のチャンスだが、投資内容がこれまでの延長線上にならないよう注意したい。かつてのように華美な館内で豪華な料理を提供しても顧客満足が得られなくなってきている。施設のコンセプトを変えぬまま、リニューアル工事をしても売り上げアップにはつながらない。

 リニューアル効果が出にくくなっている要因は世代交代によるものだ。30年ほど前の旅館の設備投資ブームの際は、顧客ターゲットの中心は団塊より上の世代で、華美なものが好まれた。明るい派手なじゅうたんや吹き抜け、美術品に囲まれた空間が顧客を魅了した。

 しかしながら、これからの設備投資の成否は、ミレニアル世代をファンにできるかにかかっている。ミレニアル世代とは、1981~96年の間に生まれた世代で、今年時点で23~41歳となる世代である。この世代の特徴は、モノを購入するよりも体験に重きを置く。ぜいたく品は好まず、ミニマリズム(装飾を必要最小限まで省略すること)を好む。他の人が持っていないようなユニークなものを求める。社会問題やソーシャルグッド(社会に良い影響を与える製品や活動)を好むといった特徴を持つ。

 地方の古民家を改装した分散型施設や、グランピング施設、自然資源を活用した体験施設が多くの利用者を集めているのは、新型コロナによる一過性ではない。新たな顧客層の台頭により、人気施設が変遷したことによるものである。

 ミレニアル世代はまだ若いから顧客ターゲットになりにくいと考える方もいると思うが、投資回収の目安である10年が経過すると33歳から41歳となる。売り上げアップに欠かせない中核ターゲットとなることは間違いない。改装計画はオーナー経営者1人で決めずに、ミレニアル世代のスタッフや専門家、取引業者の意見をよく聞き進めると良いだろう。

 (アルファコンサルティング代表取締役)

 
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