【逆境をチャンスにー旅館の再生プラン 592】コロナ小康期の業績アップ法7 青木康弘


青木氏

 前回に引き続き、コロナ小康期に業績アップに向けて取り組むべきことを紹介したい。感染者数の抑制が続くと雇用調整助成金や補助金、融資制度が打ち切られることが想定される。そうなる前に業績の正常化を図りたい。

 7、営業、客室、調理部門の体制やシフトを見直す

 新型コロナが沈静化し、緊急事態宣言が解除されたことで、観光地には少しずつにぎわいが戻ってきている。観光シーズンと県民割が重なっている地域は11月以降満室が続いている施設も珍しくないが、全国的に見ると回復はまだら模様だ。その理由として大きいのが、客層ごとの回復率の差である。

 カップルや家族、小グループをターゲットとしたプライベート感のある施設がいち早く稼働率を回復させている一方で、中規模以上のグループや団体をターゲットとした施設は回復が遅れている。

 同様の傾向は、忘新年会シーズンに入った都市部の飲食店でも現れている。個室やテーブル席を備えた飲食店は、職場の仲間や取引先との小規模な宴席で週末は満席となる店も増えてきている。一方で、団体客を主要ターゲットとしている大型宴会場をもった居酒屋やホテルは閑散としている状況だ。

 海外の感染動向から推察すると、中規模以上のグループの回復は当面先と考えた方が良いだろう。小グループ以下をターゲットとして、営業、客室、調理部門の体制を見直すことをお勧めする。

 初めに取り組むのが、各持ち場の役割とシフトの変更である。営業部門をいったん縮小・廃止し、他部門に人員異動させ個人客向けサービスの充実を図ることをお勧めする。営業部門に所属していると、どうしても営業の立場からの考え方や関わりになってしまう。他部門に異動させることで、アフターコロナにおいて施設の業績を改善させるために考え行動するきっかけになるだろう。

 客室係を配置している施設は、団体客がないと業務が非効率になりがちだ。自分の担当する団体に合わせて出勤から退勤までの業務を組み立てているため、担当がないと手待ちになるか休暇を取るしかなくなる。

 雇用調整助成金もいずれ期限切れを迎えるので、団体客が戻らなくても客室係に仕事を与えなければならない。これまでの客室係の働き方を見直し、フロントやレストラン、館内サービスをマルチシフトで担当させるなどの工夫が必要だ。

 調理部門も団体客が当面の間戻らないことを前提に体制や働き方を見直したい。個人客向けに絞れば、朝食のスタート時間を遅らせたり、夕食の終了時間を早めたりすることが可能だ。負荷軽減だけでなく、人件費削減にもつながる。一歩進めて調理場のシフト制にも挑戦したい。

 朝食を当番制にすれば、全員が出勤しなくて済みシフト制に移行しやすい。事業再構築によって、昼間時間帯に日帰り客向けのレストラン営業を行えば、調理スタッフを拡充しやすく、よりシフト制に移行しやすくなる。

 アフターコロナへの対応は受け身にならず、改革のきっかけになるよう経営者自ら主体的に取り組みたい。

 (アルファコンサルティング代表取締役)

 
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