前回コラムに引き続き、新型コロナの影響が続く中で銀行向けの事業計画を策定する方法を紹介しよう。お盆休みの週は多忙を極めた旅館・ホテルが多かったが、9月以降の業績見通しが立たないという声も聞く。継続的な資金繰り支援を受けられるよう万全な対応をしたい。
3、設備投資を計画している場合は財務状況の悪化に注意する
新型コロナ対策融資は、無金利、無担保に加えて、据置期間が最大5年まで延長されるものがあるなど、充実した制度となっている。銀行との付き合い方に問題を抱えていたり、過去に債権放棄などの支援を受けていたりしていなければ、必要な運転資金は原則として融資してもらえる状況にある。
一方で、新型コロナが終息した後の財務状況について冷静な見通しを立てておくことも大切だ。例えば、既存借り入れ1億2千万円、年間売り上げ1億円の施設が、新型コロナによる資金繰り対応で月平均500万円の赤字資金の融資を受けていたとする。既存債務をリスケした上で、赤字資金の借り入れを1年間続けたと仮定すると、借入残高は1億8千万円まで膨らむことになる。
既存借り入れの条件変更や新規借り入れの据置期間により、数年の間は資金繰りに困ることはないと考えられるが、その後は新型コロナ流行前の1・5倍の元本弁済が必要となる。毎月の収支がギリギリで借り入れ返済に苦労していた施設は数年後に大変厳しい状況になることが予想される。巨額の赤字決算により債務超過になる法人も少なくないだろう。
近い将来設備投資を計画している施設は、半年後の財務状況がどうなるか予測を立てておきたい。赤字続きにより債務超過に転落すると設備資金の借り入れが困難となるからだ。施設運営に必要な設備交換など、緊急性を要する設備投資は早めに実施することをお勧めする。
幸いにして今のタイミングであれば融資を受けやすい状況にある。また、新型コロナ対策の一環として、設備投資にも使える補助金制度が充実している。客室や大浴場、お食事会場のリニューアルなど、商品力を高め、ウイズコロナ、アフターコロナに対応するための設備投資は今のうちに取り組んだほうが賢明かもしれない。
(アルファコンサルティング代表取締役)