【逆境をチャンスにー旅館の再生プラン 464】失敗しないM&A戦略3 アルファコンサルティング代表取締役 青木康弘


 前回に引き続き、M&Aを実施するに当たり失敗しないためのポイントを紹介しよう。事業拡大、発展のチャンスとなる成功事例もあるが、中には本業の業績悪化につながった失敗事例も出てきているので注意したい。

 3、譲渡契約の諸条件に注意する

 不動産取引と異なり、M&A取引ではさまざまな諸条件が付くことがある。分厚い譲渡契約書を隅々まで読みこなすのは難しいが、譲受後の従業員の地位や業者取引、売上債権の精算有無、譲渡代金の支払い方法は最低限よく確認しておこう。

 譲受後の従業員の雇用については、従前は引き継ぎせずにいったん全員解雇したり、同条件で雇用して1年後に継続するか見極めしたりというケースが多かった。現在では、人手不足が深刻化していることもあり、原則雇用継続することをお勧めしたい。

 譲受後に選抜することが知れ渡ると優秀なスタッフが物件引渡し前に退職してしまい、正常な運営ができなくなってしまうので注意しよう。また、退職金の支払いを売主、買主どちらが負担するかよく確認しておいたほうが良い。曖昧なままにしておくと、引き渡し後にスタッフから退職金を支払ってくれと言われるリスクがあるので注意したい。

 業者取引については、売主が地元での風評悪化を避けるために、譲受後も地元業者との取引を継続することを契約に盛り込むよう依頼してくるケースがある。もしこの条件に応じるのであれば、スタッフの不正の温床になっていたり、取引価格が割高であったりしていないかどうか契約調印前に確認しておくことが望ましい。

 売上債権の清算有無については、もし月商に比べて売上債権、買入債務が過大であったり、数年間残高に変更がないものがあったりする場合には、簿価と実際の回収・支払額との差額を清算するという文言を契約に盛り込んでおいた方が良い。売掛金に計上してあった宿泊代金が、取引先がすでに倒産して回収不能ということがあるからだ。

 譲渡代金の支払い方法については、株式もしくは物件の引き渡し時一括というのが一般的であるが、交渉できるのであれば一部留保し、数カ月後に支払いという条件の方が望ましい。全て代金を支払ってしまうと、譲受後に瑕疵が見つかっても売主と交渉しにくいからだ。

(アルファコンサルティング代表取締役)

 
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