【観国之光 324】緊急事態宣言解除 浮かれるのはまだ早い 本社論説委員 内井高弘


緊急事態宣言が解除され、桜も満開とあって多くの人でにぎわう東京・上野公園(3月下旬)

 新型コロナウイルスの感染拡大防止に向け、1都3県(東京、神奈川、埼玉、千葉)に出されていた緊急事態宣言が3月21日、解除された。観光関係者は旅行者の増加に期待をかけるが、リバウンドを警戒する声もあり、複雑な表情だ。

 解除後、航空会社には予約が入りはじめているという。羽田空港では旅行などに出かける人の姿が見られ、一時の閑散とした風景は、今は想像し難い。

 宣言は2カ月半に及んだが、感染者は思った以上に減らず、最近は手詰まり感も漂っていた。緊急事態の効果も疑問視され、これ以上延長はできないとの政府判断だろうが、解除後、新規感染者は増えつつある。

 解除後、初の週末となった27日、陽気に誘われ、観光地は多くの人でにぎわった。

 東京の桜の名所の一つ、上野公園は花見客でいっぱいで、酒宴を楽しむ姿こそなかったものの密な状態があちこちで見られた。「こんなに(人が)いるとは思わなかった。自粛疲れに嫌気がさしているのだろうが、解除で気が緩んでいるのでは。人のことはいえないが(笑い)、感染者が増えないか心配」と年配夫婦。「長居しないで早く帰ります」と述べ、足早に立ち去った。

 急に人出が増えれば、観光地が感染再拡大の舞台ともなりかねない。有名観光地の観光協会関係者は「来てほしい気持ちはあるが、一度に押し寄せられると後が怖い。来るなとはいえないだけに、何とも悩ましいところ」と心情を吐露する。

 緊急事態宣言の対象外となっていた地域で感染者が増えている。宮城県の村井嘉浩知事と仙台市の郡和子市長は事態を重く見て、3月18日、共同会見を行い、独自の緊急事態宣言を発した。4月11日まで続けるという。

 新型コロナ対策特別措置法には基づかない宣言だが、「同じくらい重いものだという意識をもってほしい」と訴えた。三つの緊急対策、(1)感染抑制対策(2)早期発見と感染拡大防止対策(3)営業時間短縮要請に向けた機動的な発動―を打ち出し、感染拡大を抑え込む。

 山形でも感染者が増え、22日には山形市で緊急事態宣言が出されている。28日まで3日連続で300人以上の新規感染者が確認された大阪府。吉村洋文知事は「まん延防止等重点措置」の適用を国に求める方針という。「市中感染の入り口に入っている。第4波に入ったと分析している」と危機感を示す。

 いつまで続くか、収束の気配が見えないコロナ禍。国民に対するワクチン接種も遅れている。宣言は解除されたとはいえ、浮かれるのはまだ早い。足元をしっかりみて対応していきたい。

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