【観国之光 309】GoTo延長 観光需要下支え必用 本社論説委員 内井高弘


Go Toトラベルで客足が回復している地域も少なくない(写真と本文は関係ありません)

 制度の不備が次々と露呈し、批判も少なくない政府の観光需要喚起策「Go Toトラベル」事業だが、新型コロナウイルス禍に苦しむ観光業にとっては一定の効果をもたらしている。本紙取材でも「経済効果を考慮すると非常にありがたい施策」と評価する声が多い。「事業がなかったらとっくに倒産していた」と心情を吐露する事業者もいる。

 「全ての面で段取りが悪すぎる」「無駄と思える手間が非常に増えている」など、手厳しい、現場ならでの意見もあるが、共通しているのは「事業が終わった後の反動が怖い」という見方だ。

 同事業は来年1月末までが目安とされるが、ここにきて延長を求める動きが出ている。感染拡大で落ち込んだ観光需要の下支えが必要との判断がある。

 とりわけ熱心なのが公明党で、党の新型コロナウイルス感染症対策本部(本部長・斉藤鉄夫副会長)は10月27日、「少なくとも来年のゴールデンウイーク(GW)が終わるまで延長する」ことなどを求める提言書を菅義偉首相に提出した。首相は「予算がなくなったからやめるということではなく、全体を見ながら判断したい」と答えた。

 斉藤氏は「観光、交通業界全体の下支えまでは至っていない。GWという大きな観光シーズンまで継続した方が社会経済活動の再生に役立つ」としている。

 自民党や自治体などからも延長を求める声があがっており、延長幅、追加経費をどうするかが今後の焦点となりそうだ。

 同事業は20年度第1次補正予算に約1兆3500億円を計上。宿泊旅行で7300万人分、日帰り旅行で4800万人分を想定し、7月から始まった。9月末までの宿泊者は延べ2518万人、使用した割引支援額は1099億円とされる。

 同事業が延長されることに異論はない。コロナ禍に収束の気配は見えず、大手を振って旅行に行く環境とはいえない。支援策があるから「出かけてみようか」というのが旅行者の偽らざる心境ではないか。支援がなくなれば旅行機運は一気に冷え込む恐れがある。

 事業の継続を望むが、トラブルも相次いでおり、制度設計をしっかりしてほしい。消費者、現場の声を真摯(しんし)に受け止め、不公平感のないような運営が望まれる。延長となれば予算も大きな額になる。投入に見合うだけの効果と評価を引き出してほしい。

 秋が深まるにつれて新規感染者が増えている。気温が低下して湿度が下がると感染力が強くなるともいわれているだけに、油断はできない。業界関係者は感染防止対策を徹底すると共に、消費者にも注意を呼び掛けていこう。
  

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