【観国之光 296】インバウンド 意識変化見据え対応を 本社論説委員 内井高弘


外国人観光客の姿が消えた東京・銀座。にぎやかさが戻るのはいつだろうか

 新型コロナウイルスの感染拡大で観光業は大きなダメージを受けているが、なかでもインバウンド市場は壊滅的な状態となっている。

 5月の訪日客(推計値)はわずか1700人にとどまり、1964年の統計開始以来、過去最少となった。昨年と比べた減少率は2カ月連続で99.9%と、記録的な落ち込みが続いている。

 世界全体のコロナ感染者数(米ジョンズ・ホプキンス大まとめ)は6月30日現在で1030万2867人、死者数は50万5518人となり、なお増え続けている。コロナの抑え込みに成功したかにみえた中国だが、北京市では感染者が再び増加しており、近隣の河北省安新県が住民の移動制限を敷いたという報道もある。感染再拡大への警戒が高まっているようだ。

 一方で、国内感染は小康状態にあると判断してか、政府は出入国規制を緩和する方針を示している。

 対象となっているのは感染が落ち着いているタイ、ベトナム、オーストラリア、ニュージーランドの4カ国。まずベトナムとの間で相互に入国を認めることで合意し、6月25日には日本人駐在員や出張者約150人がベトナムに入国した。

 ビジネスがメインとはいえ、相互交流の再開に向け一歩を踏み出したことは明るい話題といえるだろう。日本経済を回復させるにはいつまでも出入国を止めてはいられない。コロナ禍が収束し、観光客の受け入れが始まることを願わずにいられない。

 その際、水際対策をしっかりと行ってほしい。感染の有無を調べるPCR検査の徹底など受け入れ態勢の拡充が欠かせない。

 世界の状況を踏まえると、インバウンド市場が元に戻るのは2~3年先、「下手をするともっとかかりそうだ」との見方もある。その時、旅行者の意識も変化していることも十分あり得る。旅行先として「安心・安全」な国なのか、ということが選ばれるポイントになるのではないか。

 今は日本人による国内旅行をどう復活させるかが焦点となっている。全国各地では自治体が独自に県民などを対象にしたキャンペーンを行い、観光需要の喚起に努めている。8月からは政府による「Go Toキャンペーン」も始まりそうだ。

 インバウンドは政治情勢や自然災害などに左右されやすく、決して安定した市場ではない。過度な依存は避けるべきだとこの欄でも主張してきた。とはいえ、インバウンドが新たな市場を切り開いてきたのも事実だ。訪日客はいずれは戻ってくるだろうが、コロナ禍の経験を踏まえ、どう向き合うべきか、今からしっかりと考えていかなければならない。

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