【観国之光 276】暖冬で苦しむ観光業 冬のイベント再考の時? 本社論説委員 内井高弘


山頂を目指すロープウエーは雪を求める人で長蛇の列(蔵王温泉スキー場、1月上旬)

 暖冬が地域の観光産業に影響を及ぼしている。凍てつくような寒さがなく過ごしやすいのはいいが、スキー場などは雪不足に頭を抱える。雪まつりを予定している地域も同様だ。

 売り上げ減少に苦しむ事業者を支援しようと、緊急融資に踏み切る自治体も出ている。

 ウェザーニュースによると、全国400カ所のスキー場のうち、1月24日時点で、滑走可能なスキー場は73.8%、8日の67.5%と比べると増えているが、昨年の同時期に比べると少ないのが実情だ。

 北海道では雪にまつわるイベントやスポーツ大会が中止や縮小に追い込まれるケースが出ている。例えば網走市で2月に開催される「あばしりオホーツク流氷まつり」。今年は目玉である雪像制作を取りやめること決め、期間も4日間から2日間に短縮する。

 埼玉県秩父地方の「秩父三大氷柱」。寒さを売りにした観光名所だが、気温が高く氷柱が維持できず、2カ所が14日から閉園を余儀なくされている。

 世界文化遺産の合掌造り集落、白川郷で13日、冬の風物詩であるライトアップが始まった。雪景色の中に浮かび上がる幻想的な風景が売り物だが、今年は勝手が違う。雪がないのだ。34回目を迎えた冬のイベントだが、関係者によると、雪のないライトアップのスタートは初めてという。

 豪雪地帯として知られる新潟県南魚沼市だが、雪不足を受けて市内のスキー場や旅館・ホテルなどが苦戦している。宿泊のキャンセルも出ているようだ。市は事態を重視し、10日に中小企業向けの緊急融資(異常少雪緊急経営支援資金)を行うと発表した。

 対象は雪不足で売り上げの減少が見込まれる旅館・ホテル、索道業、スキー学校、建設業など。融資額は運転資金など最大1千万円。申し込みは市内にある金融機関の支店で行うことができ、利率は固定で年1.25%。返済は5年以内で、融資に必要な信用保証料も市が補給するという。

 山形県も16日、「記録的な暖冬・少雪に係る金融支援」策を打ち出した。中小企業を対象に5千万円を限度に運転資金を貸し付けるほか、県庁内に特別金融相談窓口を設置した。暖冬・雪不足に対応した支援策は初めてという。

 スキーや雪まつりなど、雪や氷をあてにした冬の観光イベントは再考の時期に来ているのではないか。降雪が少ないのは今年だけではない。気候の変化は予測できないが、異常気象はいつでも起こり得るという前提で観光戦略を練っていく必要があるのではないか。

 それができれば苦労はしない、と言われればそれまでだが…。

 
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