【観光立国・その夢と現実 1】佐賀嬉野バリアフリーツアーセンターの観光経済新聞・実行委員会時別表彰を受けて 小原健史


 令和2年1月17日、東京の浅草ビューホテルにて「人気温泉旅館ホテル250選」の式典会場において、わが「佐賀嬉野バリアフリーツアーセンター(BFTC)」が「実行員会特別表彰」を受けた。このことは、誠に有難く実行委員各位、および観光経済新聞社へ厚く御礼を申し上げたい。

 私は、永年にわたり「全国旅館ホテル生活衛生同業組合連合会」いわゆる、全旅連の青年部や親会の幹部また会長として努力を続けてきたつもりであるが、70歳を超えた今は、全旅連のほとんどの役職を退いて、地元嬉野市でBFTCや商工会の活動等に専念している。

 今回の受賞を機に、まずはBFTCの活動について述べ、加えて私たち団塊の世代前後の旅館業界団体の活動に携わった者が、その青壮年期をかけて業界のさまざまな課題の解決に挑戦し闘ってきた軌跡をつまびらかにし、今回の表彰に対して感謝の誠を捧げたい。

 佐賀嬉野BFTCの活動を語るには、まず、わが愛する故郷「嬉野温泉」の沿革に触れなければならない。

 嬉野温泉は第2次大戦後の昭和30年代から始まった高度経済成長期に「歓楽型温泉観光地」として名をはせ、山陽新幹線の博多駅開業をピークとして西九州の宿泊拠点として繁栄をしてきた。しかし、わが国の観光旅行の形態が「団体から個人へ」「男性主体から女性主導へ」「歓楽型から寛ぎ・癒やしや体験・交流」へと変換する中で、また、20世紀末期のバブル経済の勃興と崩壊という経済の激動の中で、わが国の温泉観光地が大方そうであったように、嬉野温泉も大きな転換点に立った。

 当時の私は、バブル経済に乗って自身が建設し経営していたテーマパーク事業の浮き沈みに苦しみながら「嬉野温泉の未来永劫の繁栄!を支える次の柱は何か?」との命題と格闘していた。

 そんな中、今から15年ほど前に、かつて日本青年会議所の会頭を務めた弟嘉文からJCの仲間の中村元氏を紹介された。彼は伊勢志摩BFTCの理事長であり、たちまちに嬉野温泉や佐賀県庁でバリアフリー観光の講演をしていただいた。

 中村氏は「高齢者や障がい者にやさしい観光」「ひとそれぞれのパーソナルBF基準」などの今までとは明らかに異分野の言葉で21世紀のあるべき観光の一つの姿を語られ、それは聴くものに感動を与えた。

 その後、中村氏と長いお付き合いが始まったが、今思うにBF観光に加えて“既存の観光業界にずっぽり浸かった小原”には“そんな既存の観光業界の実態に強烈に批判的な視点を持った中村氏”の歯に衣着せぬ意見やアイデアが極めて新鮮で魅力的であったのだ。

 早速に、佐賀県旅館組合で伊勢志摩BFTCの視察に赴いたが、中村氏から聞いていたBF観光の概念が、各旅館ホテルの現場では「病院にはない分厚い腰板飾りのような手すり」や「車いすの人でも自前で露天風呂入浴できるスリスリ台」「熟睡した聴覚障がい者でも非常時には飛び起きるフラッシュライト」「EⅤ階ごとに異なる花の香り」など、各種の障がいに対応したさまざまなBF化を施した旅館ホテルや公共施設、三重交通の低床バスなどの実態は、嬉野温泉の将来に明確な啓示を与えるには十分なものだった。

 帰郷すると、すぐに県旅館組合理事長名で視察報告書を当時の古川康佐賀県知事へ提出、英明なる古川知事の即断即決で、佐賀嬉野BFTCの活動支援と嬉野温泉の旅館ホテルのユニバーサルデザイン(UD)化、BF化の資金として5年間で5千万円の莫大な補助金が与えられた。
     

 
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