【観光業界人インタビュー】韓国観光公社 東京支社長 金榮湖氏


韓国観光公社 東京支社長 金榮湖氏

日韓観光交流拡大へ

20代女性にソウルが人気 温泉旅館の“魅力”発信を

──3月15日に赴任されて7カ月余。日本市場をどう見ているか。

 「日本から韓国への海外旅行は成熟市場といえるが、中身はダイナミックに変化し続けている。テレビドラマ『冬のソナタ』をきっかけに03年から韓流ブームが発生。ペ・ヨンジュン、クォン・サンウなどの韓国人俳優が日本でも大人気となり、中年女性を中心に韓国旅行がはやった。現在では『少女時代』『KARA(カラ)』などのK—POP女性アイドルグループが日本の若い女性に受けている。若い女性向けの内容を充実させた韓国旅行ガイドブックも増えている。韓流ブーム以前は、訪韓日本人旅行客の6割が男性だったが、昨年は6割が女性。逆転した」

──訪韓日本人女性客の年齢層は。

 「昨年は30代から40代が中心だった。今年は20代の女性が増えた」

──韓国は10年から12年を「韓国訪問の年」と定めている。

 「今年の目標は訪韓外国人旅行客数850万人。うち日本人客数は320万人を目指している」

──現状は。

 「達成の見込みだ。870万〜880万人位になると思う。日本人は昨年が305万人。順調に行けば320万人に届く」

──外国人観光客はソウルへの一極集中が目立つが。

 「『るるぶ』『地球の歩き方』などのガイドブックの編集者から『ソウル』を扱わないとビジネスにならないと聞いた。るるぶの昨年の売上トップは『ソウル』で、2位は『韓国』だったそうだ。ただ、観光客の分散化は我々の課題だ」

 「9月17日から19日まで、JTB、KNT、HIS、阪急交通社、トップツアー、ジャルパックの6社の社長に韓国にお越しいただいた。私が同行した。かつての百済の都『扶余』に完成した『百済文化団地』の開業記念式典にご出席いただき、李明博大統領と懇談。現在500万人規模である韓日間の観光交流人口が今後1千万人を超えるようにお互いに努力していきましょう、と確認した」

 「10月21日の羽田空港新国際線旅客ターミナルの開業は観光交流人口拡大のよいきっかけとなる。羽田・ソウル間が1日12便となり、週約8千席が増える計算だ」

──イ・ビョンホン主演のテレビドラマ「アイリス」のロケ地となった秋田県には、昨年の冬以降、韓国人観光客が大挙して訪れた

 「ドラマの影響力は強い。良いイメージも悪いイメージも伝えることができる。韓国には温泉が少なく、雪も日本より降らない。アイリスを通して見た温泉と雪に韓国人は魅せられた。秋田に対する良いイメージが定着した」

──九州で温泉とゴルフというのが訪日韓国人旅行客の定番だった。

 「訪日韓国人旅行客はリピーターも増えている。九州で温泉を体験した人は、次はアイリスで見た東北の温泉を体験したいと思う」

──韓式「旅館(リョガン)」は日本旅館とは少し違う。韓国人の旅館に対するイメージはどうか。

 「特にリピーターは日本の温泉旅館での滞在を好む。温泉に浸かって、風呂上がりにビールを一杯、そして豪華な食事。こんな体験は韓国ではできない」

──訪日韓国人旅行客は団体よりも個人が多い。

 「韓国人は個人か小グループで動く。家族や親戚で旅行する習慣がある。最近は、還暦のお祝いで行く海外家族旅行が流行っている」

──いま人気の場所は。

 「人数的には東京、大阪などの大都市が多い。ソウルの仁川国際空港からは日本各地に直行便が飛んでおり、地方の温泉地も訪れやすい」

──個人旅行だと不便なことはないか。

 「完全なFITではなくパックツアーを使うことが多い。すべてを自分たちで手配するのは難しい」

──日本の観光業界に韓国人誘致に向けたアドバイスを。

 「宿泊施設や鉄道など日本の基本インフラは世界一だ。おいしい食事、温泉、旅館、四季折々の風景、すべて素晴らしい。これらの日本の魅力を知らない韓国人はまだまだ多い。さらに積極的な情報発信を行えば、訪日韓国人旅行客を2倍、3倍に増やすこともできるはずだ」

【キム・ヨンホ】
58年生まれ。83年韓国観光公社入社。99年日本部長。07年〜08年海外振興處長。09年〜10年1月企画調整室長。10年3月東京支社長(現職)。

韓国観光公社 東京支社長 金榮湖氏

 
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