【観光業界人インタビュー】日本政策投資銀行 三ヶ山 正明氏


日本政策投資銀行 三ヶ山 正明氏

政投銀が観光特化のファンド

観光業にニューマネー供給 地域経済活性化を面的支援

──観光特化の新ファンドを立ち上げられた。

 「日本政策投資銀行と、事業再生や活性化を支援する官民ファンドの地域経済活性化支援機構、そして金融・不動産投資会社のリサ・パートナーズの3社が共同で、観光産業を対象にした地域活性化ファンド『観光活性化マザーファンド投資事業有限責任組合』を4月1日に立ち上げた」

──なぜつくったのか。

 「観光産業は地域経済で重要な産業に位置付けられている。観光関連の事業者に対する資金提供やノウハウを有する事業者・専門家派遣などで、地域経済の活性化を図る目的がある」

──特長は。

 「日本全国を網羅する観光に特化した初めてのファンドだ。ファンド総額は13億円だが、マザーファンドが直接観光関係企業に投資するほか、マザーファンドの傘下に、地銀や信金といった金融機関と共同出資する地域別の子ファンドを設立し、子ファンドを通じても投資する。つまりマザーファンドの出資金を種銭に、各地にファンドを組成し、そこからのニューマネーを地域の観光業界に供給する。これにより、例えば担保等の問題で地銀、信金の貸出が限界に達している融資先に対しても新たな資金の供給ができるようになる」

──いままでのファンドとの違いは何か。

 「既存の再生ファンドはディスカウントでの債権買い取りが中心で、投資事業者等に対する新規与信は想定していない。本ファンドでは成長支援の一環として事業者に必要な投資について新規与信を行う。また必要に応じて地域経済活性化支援機構の観光専門人材が経営指導を実施する。これらにより投資先の企業価値も向上する」

──観光業界はすそ野が広い。どこまでが投資対象になるのか。

 「地域の旅館・ホテルやその交通インフラを担う交通機関、特産品生産者などの地場産業など、観光産業に資するものが広く対象となる。観光産業に従事あるいは関連する企業で、自社のさらなる成長や地域の発展のために資金を必要とする企業を想定している」

 「特定の1社だけでなく、地域内または地域間の企業連携・再編等にかかる面的な支援にも取り組む」

──どのような投資手法をとるのか。

 「有望企業に対する投資のニューマネーは、メザニンファイナンス(劣後ローン・優先株式など)および出資等のリスクマネーを想定している。金融機関にとってリスクが高いお金という意味だ」

──ファンドには出口戦略(エグジット)が必要だ。

 「収益力や企業価値が向上したところで、メザニンファイナンスを地銀の一般融資に転換するなどの手法で対応したい」

──面的支援のイメージは。

 「会津東山温泉3旅館の再生事例が一つの成功モデルだ。千代滝、新滝、不動滝という三つの老舗旅館をメーンバンクの東邦銀行が中心となって一体で同時再生支援した。具体的には各旅館の旧会社を清算し、新会社『くつろぎ宿』を設立して事業を承継。同社には東邦銀行とリサ・パートナーズが共同で組成した地域再生ファンド『福島リバイタル・ファンド』が100%出資し、さらに東邦銀行と日本政策投資銀行が協調融資した。経営はコンサルタントのリゾート・コンベンション企画に委託した。東山温泉の中心部に位置する3旅館を事業再生することで、東山温泉の面的再生、そして会津若松地区観光産業の基盤の維持、強化を図ることができた」

 「05年に支援を開始し、09年に再生を完了した。福島リバイタル・ファンドが所有する全ての普通株式をリゾート・コンベンション企画に譲渡。東邦銀行による長期のリファイナンスも同時に実行されて再生支援スキームが完了した」

──投資の進行状況は。

 「現在、地銀数行と子ファンド組成の準備を進めている。早ければ第1号が9月までに立ち上がる。直接投資の案件もいくつか進行中だ」

──問い合わせ先は。

 「日本政策投資銀行企業ファイナンス部(TEL03・3244・1439)課長の三ヶ山か副調査役の大久保までご連絡を」

【みかやま・まさあき】
95年日本政策投資銀行入行(旧北海道東北開発公庫入行)、北海道支店に配属。98年通商産業省(現・経済産業省)出向。03年同行新潟支店、05年人事部を経て08年企業ファイナンスグループ。11年から現職。

日本政策投資銀行 三ヶ山 正明氏

 
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