【観光業界人インタビュー】日本政府観光局 理事長 清野智氏

  • 2018年8月8日

清野理事長

JNTOの事業展開

五輪契機に地方誘客強化 2030年の訪日6000万人へ道筋

 ――JR東日本会長などを経て、4月にJNTOの理事長に就任された。就任の感想、意気込みをうかがいたい。

 「JR時代から国内旅行を中心に観光には携わってきたが、JNTOに実際に来てみて感じるのは、外国の方を相手にするインバウンドというのは、言葉の問題だけでなく、それぞれの国・地域の目線に立ったプロモーションが求められるということ。例えば、欧米豪では、日本人が思っているほど日本のことを知らない方々も結構多い。そうした人たちにはそれに合ったプロモーションが必要。また、われわれが思う日本の良さと、それぞれの国の人が思う日本の良さは違う。同じところもあるが、決めつけてはいけない。まだわれわれが気付いていない魅力が日本にはたくさんあるので、そうした切り口をプロモーションで大事にしていきたい」

 ――政府は、2020年に訪日外国人旅行者数4千万人、消費額8兆円、さらに30年には6千万人、15兆円の目標を掲げている。

 「JNTO、日本全体として直面しているインバウンドの質、中身の問題としては、昨年の訪日外国人旅行者数は2869万人だが、構成比を見ると、東アジア、東南アジアの合計が約85%で、アジア以外の欧米豪などはまだ少ない。そして、国・地域別のバランスに加え、国内の訪問先のバランスの問題がある。東京~富士山~大阪のいわゆるゴールデンルートへの訪問が大多数だ。受け入れがいっぱいとなる地域が一部にある半面で、地方も近年は増えてはいるが、まだまだという地域もある」

 ――地方にいかに誘客していくか。

 「初めての訪日の際にはゴールデンルートでも、2度目、3度目の訪日時には地方を訪れてもらえるようにしたい。訪日外国人の旅行消費額は昨年が約4.4兆円だが、インバウンドを通じた地方創生が求められており、これをさらに増やし、日本隅々まで広げていくことが重要だ。今われわれが考えているのは、来年のラグビーワールドカップ2019日本大会、20年の東京オリンピック・パラリンピックを契機とした誘客だ。欧米をはじめ世界から日本に来てもらうのだから、こうした機会を生かして地方にも足を伸ばしてもらう。そのためには今から地方にもこんな素晴らしいところがあると、プロモーションしていく必要がある」

 ――東北観光推進機構の会長も務められたが、東北の観光復興はどうか。

 「東北の外国人宿泊者数の伸び率は日本全体の平均を上回っているが、全国に占める割合で言えば、まだ1%強くらいだ。会長時代には『連携』をキーワードに、県と県、県と市、官と民の連携の強化を呼び掛けた。それぞれの努力が少しずつ実ってはいるが、東北のインバウンドはこれからだ」

 ――自治体や産業界に対するJNTOの役割は。

 「JNTOはインバウンドに関するデータを一番多く持ったアドバイザーでもある。現在、世界20都市に海外事務所があり、マニラにも開設を準備している。現地採用を含めて海外事務所のスタッフは、現場を知っている。そうしたデータの提供も含め、各地域の自治体などとの連携窓口として本部に『地域連携部』がある。アジアそして欧米豪にアプローチするにはどうしたらいいか、地域と共に考え、それぞれの国・地域に適したプロモーションを実施していく。ウェブサイトやSNS、ビッグデータなどの活用についても『デジタルマーケティング室』に専門的な人員を配置し強化している」

 「もう一つ申し上げたいのは、JNTOの役割はインバウンドだが、インバウンドをより発展させるためにアウトバウンドも大事だ。相手の国から来てもらうには、こちらからも行かなければ。エアラインの路線確保でもそうだ。日本人は、もっと外に関心を持つ必要がある。それは自分の国に関心を持つことにもつながる。互いを知ることがツーリズムには大切だ」

 ――MICEの誘致、開催の促進については。

 「自治体も懸命に取り組んでいるのでさらに力を入れていく。国際会議場とホテルをセットにした大型施設が世界各地に整備されている。施設整備や誘致に国が関与している都市もある。そうした都市とわれわれは競争していかないといけない。官民一体となってMICEの誘致に努めてまいりたい」

 ――在職中に成し遂げたいことは。

 「JNTOには、自分たちがインバウンドを引っ張っていくという自信、プライドがあるが、さらに実力を付けていきたい。そして2030年の訪日外国人旅行者数6千万人、その消費額15兆円という国が掲げた目標に道筋を付けたい。観光庁と一緒にインバウンドの旗を振り、これまで日本が到達したことがないところに向かってチャレンジしていきたい」

せいの・さとし 東北大法学部卒。1970年に国鉄入社、2006年にJR東日本社長、12年に同会長。15~17年度に東北観光推進機構会長。70歳。

【聞き手・向野悟】

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