【観光業界人インタビュー】エクスペディア・ホールディングス社長 三島健氏


エクスペディア・ホールディングス社長 三島健氏

エクスペディアの戦略

JTBと包括的業務提携 エアアジアとは合弁会社

──エクスペディアの日本語サイトで4月9日から、国内・海外合わせて20万軒の宿泊施設の最低価格保証を始めた。国内の旅館・ホテルの自社サイトでの販売価格は対象となるのか。

 「エクスペディアは世界中のホテルから一括仕入れを行うことで海外ホテルに対して最低価格保証を行ってきた。今回新たに始めた国内宿泊施設の最低価格保証の比較対象は、基本的な想定としては他の旅行・宿泊予約サイトだ」

 「他サイトよりも高かった場合、エクスペディアで予約後1カ月以内に申請してもらえれば、差額を返金する。さらに次回の海外ホテル、海外ツアーの予約で使える5千円分のクーポンを提供する」

──楽天トラベルの国内契約施設数は約2万8500軒。エクスペディアの国内契約施設数は何軒か。

 「公開していないが、もっと少ない」

 「エクスペディアはワールドワイドでは世界一の旅行予約サイトだが、日本国内においては後発で、まだまだ弱い。日本は世界的にみても魅力的な旅行市場だ。思い切ったプロモーション活動で事業展開を加速する必要がある」

──JTBとの包括的な業務提携を2月21日に発表。この夏から旅館・ホテルの相互販売を始める。提携の話はいつ決まったのか。

 「2年位かけてじっくりと話し合ってきた。両者の顧客に対して、選択肢が増えて顧客満足度向上につながること、日本の旅行市場の活性化につながることなど、相互メリットが見いだせ、包括提携に至った」

──具体的な内容は。

 「今夏を目途にエクスペディアジャパンのサイト内に『旅館メニュー』を新設。JTBが提供する約7千軒の旅館予約を可能にする」

───システム結合で在庫連動をして、各国語言語で展開する世界中のエクスペディアで旅館を販売するということではないのか。

 「将来的にそうなればすばらしいと思う。現段階ではエクスペディアの日本語サイトからJTBのシステムにリンクし、JTBの宿泊商品として販売する形だ」

──この7千軒の中には、エクスペディアとも契約がある宿が相当割合で含まれるはずだか、最低価格保証の対象にはなるのか。

 「エクスペディアジャパンで販売するJTBの宿泊商品については別と考えている」

──エクスペディアが提供する海外ホテルについてはJTBとオンライン結合するのか。

 「エクスペディアのホテル予約システムとデータ連携し、『JTBホームページ』で、海外約3万都市のホテルを24時間、オンライン販売する。今秋の開始を予定している」

──JTBとの包括的業務提携の範囲はオンラインに限ったことなのか。

 「将来にわたる戦略的なパートナーシップを目指している。エクスペディアジャパンサイト上でのJTB海外ツアーやJTB現地オプショナルツアーの販売、JTB店舗におけるエクスペディア海外ホテルの販売なども、今後の状況次第では視野に入れていきたい」

──三島社長はエクスペディアの北アジア統括責任者を兼務されている。エクスペディアサイトのアジア展開はどうなっているのか。

 「世界最大級のオンライン旅行会社である米エクスペディアと、マレーシアに本社を置くアジア最大級の格安航空会社のエアアジアが、オンライントラベル事業を展開するために合併会社AAE(エアアジアエクスペディア)をシンガポールに設立。現在アジア11カ国でエクスペディアサイトを展開している。またAir Asia Goというエアアジアのユーザー向けサイトも運営している」

──LCC(格安航空会社)は欧米にもある。なぜエクスペディアはエアアジアとだけ組んだのか。

 「欧米圏は言語も似ているし、ある程度共通したマーケティング手法が通用する。ところが米エクスペディア本社のシアトルから見れば、アジア圏は遠く、言語的にも全く異質な市場。各国独自の大手旅行サイトも既にある。エアアジアと組んで『足場』を確保することで、突破口を狙った」

【みしま・けん】
98年、豪ニューサウスウェールズ大学・大学院卒。ソフトバンクBBなどを経て、08年米eBayの日本法人で事業開発、マーケティングを担当。11年1月、米Expediaの日本法人であるエクスペディア・ホールディングス社長に就任。12年3月からAAE(エアアジアエクスペディア)の日本法人、AAE Japan社長。エクスペディア北アジア(日本・韓国・台湾・香港)担当ゼネラルマネージャー。40歳。

エクスペディア・ホールディングス社長 三島健氏

 
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