【観光業界人インタビュー】アクアスつくば総合研究所長 縣 邦雄氏


アクアスつくば総合研究所長 縣 邦雄氏

浴槽水のレジオネラ対策

週に1回以上のろ過装置洗浄

2002年に宮崎県の入浴施設で起きた集団発生事件により広く認知されることになったレジオネラ症。その後、浴槽水のレジオネラ対策が進んだこともあり、大規模な集団発生事件は報告されていない。しかし、今年2月、千葉県の入浴施設でレジオネラ症による死亡事故が発生するなど、入浴施設にとってレジオネラ症対策の怠りは許されない。そこで、最近のレジオネラ症の発生状況や最新の抑制対策などを水処理大手、アクアスのつくば総合研究所長、縣邦雄氏に聞いた。

──最近のレジオネラ症の発生状況は。

 「01年、02年は、検査した浴槽水の25〜30%でレジオネラ属菌が検出されていた。しかし、02年の宮崎県の事故を契機にその対策が進み、それ以降は減少傾向にある。11年1月から11年12月までにつくば総合研究所に持ち込まれた5952検体の浴槽水の検出率は約13%だった」

──入浴施設にとってはどのような対策が望ましいか。

 「レジオネラ属菌は、バイオフィルムの中で増殖して水中に供給されるという特徴があるので、バイオフィルムが付着したらすぐに除去をする必要がある。循環ろ過装置は週に1回以上の洗浄、逆洗が必要だろう」

 「バイオフィルムを放置しておくと、それ自体が厚くなる。そこに塩素剤などの薬液を注入しても中まで届かないので、最終的にレジオネラ属菌を除去できなくなる恐れがある。そのためにも早めの定期的な洗浄作業が必要だ」

──塩素濃度を一定に保つ作業は難しいと言われる。

 「当社では、残留塩素濃度計と薬注ポンプの連動で、安定した濃度管理を行う自動塩素管理装置の導入を薦めている。最近は、全国展開をしている大手のフィットネスチェーンなどを中心に、こういった装置を積極的に導入するケースが増えている。プール水の塩素管理をしっかりと行わないと(においなどの問題で)客から苦情が出ることに気付いているからだろう」

──レジオネラ属菌の検査を早急に行ってほしい、という声が増えているようだ。

 「従来の培養法の場合は、持ち込まれた検体を8日ほどかけて培養してから判定を下す方法で、結果報告までに9〜12日ほど必要だった。しかし、遺伝子検査(LAMP法)であれば、検体が持ち込まれてから約半日で判定することが可能。最近は、LAMP法による検査の要望が多くなっている」

───最新のレジオネラ症対策を一つ挙げるとすれば。

 「モノクロラミン生成装置を使った管理方法を挙げたい。実際の温泉施設での試験によると、1リットルあたり3ミリグラム程度以上のモノクロラミンを常時、浴槽水に注入することで、レジオネラ属菌を不検出にすることができた。モノクロラミンを添加した浴槽水は、遊離塩素消毒と比較した場合、においの発生が少ないという利点もある」

──旅館・ホテルへのメッセージを。

 「レジオネラ属菌は目に見えないし、自然界に広く存在するのでその対策は大変だが、レジオネラ対策を、泉質や湯の温度、浴場の内装と同じ品質と捉え、意識的に、かつ、計画的な対策を講じることで対応が可能だ。ぜひ、安全宣言ができる浴場環境を整えてほしい」

【あがた・くにお】
名古屋大学理学部卒。1977年、日東化工(現アクアス)入社。87年から研究開発部門において、冷却水、浴槽水のレジオネラ属菌の検出、除菌技術の開発に従事。03年全旅連が作成した「レジオネラ属菌防除のための温泉浴槽水等の衛生・維持管理のチェックポイントリスト」の作成委員長。04年から現職。59歳。静岡県出身。

アクアスつくば総合研究所長 縣 邦雄氏

 
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