【観光の学校特集】東洋大学


東洋大学白山キャンパス

新時代の観光業界を牽引

 東洋大学の観光教育の歴史は50年を超え、日本で最も伝統あるものとなっている。2017年からは国際観光学部として、観光に関連する新しい学問分野を積極的に開拓しながら、観光産業と観光行政機関などと密接に連携することで、産業界などの教育ニーズに合致した時代の最先端をゆく実践的な学びを展開している。

 国際化が加速する日本の観光市場。国際観光学部では産業と政策の両分野で即戦力となる実務能力を身に付け、観光立国・日本に貢献できる人材を育成する。同学部の就学キャンパスは東京都文京区の白山キャンパス。入学定員は366人だ。

 2021年度からは、さらに国際観光を体系的に学ぶため、「観光政策・ツーリズム系領域」と「ホスピタリティ系領域」の二つの学問領域に再編し、専門的な学習を深める。多彩な専門科目は、各学生の興味と関心に応じて選択でき、国際観光に関する複合的な知識や経験を積むことが可能だ。

 「観光政策・ツーリズム系領域」では、観光に関する企画や立案、プロモーション、営業、行政において、即戦力となる実務能力はもちろん、哲学や国内外の文化などの深い教養と国際知識を身に付ける。専門性を高め、旅行会社でのプランニング、航空会社、鉄道会社などの運営、観光局でのプロモーション、公務員として観光振興、観光地域づくり法人(DMO)などで活躍できる人材を育成する。

 「ホスピタリティ系領域」では、観光業の中核であるサービス関連産業について実践を通じて学び、航空会社のCA・グランドスタッフ、ホテリエ(ホテル総支配人)、旅館の運営、ブライダル関連のビジネスなどで活躍できる能力を身に付ける。

 同学部は2020年に開設4年目の完成年度を迎え、来春には第1期生が社会へはばたく。前身の国際地域学部国際観光学科の時代から就職に強く、特に旅行、宿泊、航空、鉄道といった観光産業には50%以上が就職し、同学部での学びが社会で生かされている。

 2018年には大学院に国際観光学研究科国際観光学専攻(博士前期課程・博士後期課程)を開設。研究分野の充実も見逃せない。

東洋大学白山キャンパス

◇   ◇

 新型コロナウイルス感染症の感染拡大によって既存の枠組みの見直しが必要となった現在、観光業界で注目を集めているのが「持続可能な観光(サステナブル・ツーリズム)」だ。1992年、国連環境開発会議において、持続可能な開発の行動指針「アジェンダ21」が発表されたのを一つのきっかけに、持続可能な観光を実現するための取り組みが世界的に推進されている。

 国際観光学部においても、持続可能な観光に焦点を当てた教育・研究、人材育成に力を入れている。

藤稿教授

 「自然環境保全」を専門とし、「観光と環境の関係性」を教えている同学部の藤稿亜矢子教授は「サステナブル・ツーリズムは、観光に関わる全てのステークホルダーが実践、実現していくべき観光の方法論(あり方)です」と、持続可能な観光の重要性を強調する。

 「最も重要な生態学的プロセスを維持すること、ホストコミュニティの社会文化的な本質に敬意を払うこと、社会経済的な利益が全てのステークホルダーに公平にもたらされ、貧困削減にも貢献することが大事。つまり、『環境的』に適正であり、『社会文化的』に好ましく、『経済的』に成長できる。この3要素を満たすのが本当のサステナブル・ツーリズムです。このような観光計画を立案し、実践していく人材が求められています」(同教授)。

古屋教授

 今年6月29日には、観光庁「持続可能な観光指標に関する検討会」が、国際基準に準拠した「日本版 持続可能な観光ガイドライン(JSTS―D)」を発表した。同ガイドラインは、各地方自治体やDMOが持続可能な観光地マネジメントを行うことができるように開発されたものだ。

 「観光による地域振興」や「旅行者の意思決定過程分析」などを専門とする古屋秀樹教授は、マーケティングサイエンスの専門家としてデータに基づく観光交通計画、観光行動分析の視点から同ガイドラインづくりに参加した。「環境配慮に加えて、経済的・社会文化的指標を掲げたのが本ガイドラインの最大の特長。UNWTO(国連世界観光機関)駐日事務所と連携して本ガイドラインをいかに国内展開していくかが今後のミッションとなっている」(古屋教授)。

 オーバーツーリズムによる環境負荷など、今までのマスツーリズムに弊害がなかったとは言えない。さらに、コロナ禍を通じて観光業界は今後の在り方が問われる新時代に入った。

 「観光振興と地域の持続可能な発展とのバランスを考察し、観光客、地域住民の双方に配慮した『持続可能な観光』の推進による観光産業・政策の質的転換が求められている」(同教授)。

 東洋大学国際観光学部では、教育、研究を通じて、持続可能な観光地域づくりにコミットできる人材を育成している。

東洋大学

 


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