【竹内美樹の口福のおすそわけ 356】おでんワールド! その1 宿泊料飲施設ジャーナリスト 竹内美樹


竹内氏

 暦の上では既に春だが、まだまだ寒い。コロナ禍のステイホームが続く中、家族でお鍋を囲もう!という人が増えているようだ。温まるのはモチロン、比較的手軽に調理できるのも、毎日食事を用意する主婦にとっては魅力的。スーパーマーケットにはレトルトパウチやキューブ状の鍋つゆの素がズラリと並び、白菜や長ネギ、ニンジン、キノコ類などカット野菜が入った「鍋用セット」なんてお助けマンまである。

 そんな鍋料理について、最新の調査データを1994年から毎年発行しているのが、かまぼこやちくわなどの水産練り製品でおなじみの紀文食品だ。「紀文・鍋白書」2020年調査版によると、実際に家庭の食卓にのぼった鍋喫食率ランキングで堂々の第1位だったのがおでん。何と22年連続、不動のトップなのだそう。そして2位はすき焼き、3位が寄せ鍋だという。

 つまり、おでんは国民食とも言える。だからコンビニでも毎年おでん商戦が繰り広げられる…ハズだったが、この冬はちょっと違った。レジ横で展開していたおでんの販売を中止する店舗が続出したのだ。

 コロナの影響もある。販売を継続している店舗では、おでん鍋の前に飛沫防止用のアクリル板を設置したり、常に鍋のふたを閉め、客でなく店員が取り分けるなど対策を取っている。だが実は、コロナはキッカケとなっただけで、本当は別の要因があるらしい。

 保温中のおでんは、具が乾かないようつゆをかけたり、具によっては裏返したりする必要がある。補充や温度管理、鍋の清掃も必要だし、会計も煩雑。手間が掛かり過ぎて、人手不足の店にはイタイ。その上廃棄ロスも多い。鍋がスカスカだと見栄えが悪くて売れないから、常に具を満載にしておくと、当然売れ残りが出てしまう。地球上で9人に1人は栄養不足で苦しんでいる中、日本の食品ロスは年間約612万トンという現状に、胸を痛めている加盟店オーナーも多い。

 だが、寒い冬に温かい物が食べたいとき、夜中でもいつでも買えるコンビニおでんは、1人暮らしの強い味方として続けてほしいという声もある。その行く末については今後の動向を注視するとして、従来コンビニ各社が熱戦を繰り広げてきたおでんの具で、一番人気って何だろう?

 答えは、大根。セブンでは年間約5400万個もの大根を販売しているそうだ。先述の「紀文・鍋白書」でも、好きなおでん種アンケートの地域別、世代別全てで1位を獲得している。

 子供の頃、わが家ではおでんのときに必ず鍋が二つあった。煮た大根が大嫌いだった筆者のために、母が大根を別鍋で煮てくれていたのだ。今は率先して食べるし、一番人気もうなずけるが、当時はあのニオイが苦手だった。そんなふうに、各家庭でおでんの内容は違うようだ。例えば、わが家のおでんには、関東では当たり前とされるアレが入っていなかった。それって一体? ご当地おでんについてなど、続きは次号で!

 ※宿泊料飲施設ジャーナリスト。数多くの取材経験を生かし、旅館・ホテル、レストランのプロデュースやメニュー開発、ホスピタリティ研修なども手掛ける。

 
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