【竹内美樹の口福のおすそわけ 311】なるほど!カレー・ワールド その1 日本編 宿泊料飲施設ジャーナリスト 竹内美樹


 唐突だが、アナタの家のカレーは、どんなタイプ? ルウで作るポッテリととろみのあるタイプ、デミグラスっぽい味わいの欧風タイプ、シャバシャバタイプの汁っぽいスパイスカレー。筆者は今、このスパイスカレーに凝っている。

 キッカケは、インドでスパイスを買ってきたから。調理法は自己流だが、ガラムマサラとターメリック、カイエンペッパー、コリアンダーのほか、調合されたカレーパウダーも入れてみた。案外簡単に本場っぽいカレーができて大満足。以来、スパイスをあれこれ変えて楽しんでいる。

 家庭ごとに、カレーのタイプはいろいろあるだろう。そして時に、レトルトカレーが食卓にのぼることもあるのでは? 共働き世帯や個食の機会が増え、ご当地カレーブームも手伝って、レトルトカレーの市場規模は成長し続け、2017年にはカレールウを上回り500億円を超え、今や約3千種類もあるようだ。

 全日本カレー工業協同組合の統計によると、日本人は年間約73回カレーを食べているという。つまり、週1回以上はなんらかの形で食べていることになる。

 この数字はカレー粉とカレールウの統計から換算しているそうで、カレーライスだけでなく、カレーうどんやカレー南蛮、カレーパンなども含まれている。いずれにせよ、カレーは日本の国民食といえよう。

 日本人が初めてカレーを目にしたのは幕末のこと。「船上でアラビア人が、ごはんにイモのドロドロしたようなものをかけて手で食べていた」と遣欧使節団の日誌にあるそうだ。明治に入り、インドを植民地支配していたイギリス経由で日本にもカレーが伝わった。文明開化の象徴であった牛肉の食べ方の一つとして、カレーも広まっていく。だが、現在カレーの具としてポピュラーなタマネギやニンジン、ジャガイモは、当時まだ珍しい西洋野菜だったため、代わりに長ネギを入れるなど、今とは違うカレーだったらしい。

 カレー粉は英国からの輸入品しかなかったが、明治後期には大阪の薬種問屋が、ウコンなど漢方薬として扱われていたカレーのスパイスから、カレー粉の製造に成功。国産品が販売されたことで、より一般的に食されるようになる。

 その少し後には、インスタントカレーの元祖といわれる「カレーライスのたね」が、大正時代に入ると、お湯に溶かす粉末状のカレーが登場。こうした各メーカーの研究努力の甲斐(かい)あって、昭和25年には初の固形カレールウが発売された。これは日本が誇る発明品の一つだ。以降おふくろの味といわれるほどに、家庭料理として普及したのは言うまでもない。

 英国式に由来する日本のカレーは、小麦粉でとろみを付け、ナンでなくごはんにかけて食す西洋料理として、独自の進化を遂げてきた。本場インドのものとはまったく違う。そもそもインドには、カレーという料理自体が存在しないともいわれるが、それってどういうこと?

 続きは次号で!

 ※宿泊料飲施設ジャーナリスト。数多くの取材経験を生かし、旅館・ホテル、レストランのプロデュースやメニュー開発、ホスピタリティ研修なども手掛ける。

 
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