前回、消費税の話をさせていただいた。消費税創設当初の税率は3%だったが、現在は2回の改正を経て、8%となっている。今後は、10%への改正も予定されている。支払いしている消費税も考慮しなければならないが、売上金額の8%というのは非常にインパクトがある。
もし、これを納税しなくていいとなると、単純にその分だけキャッシュが増えることになるのだ。だから、消費税を滞納する企業や個人事業主(消費税法上、事業者という)は後を絶たない。
しかし、この消費税は合法的に納税しなくてもいいという事態もある。その事例をみていきたい。
一つには、売上高(消費税法上、課税売上高という)が1千万円を超えない事業者は消費税を納めなくてもよいという決まりになっている。趣旨としては事業規模がそれほど大きくないのに、消費税を計算して納めるという事務負担に考慮したものだ。
実際には、2年前(二期前)の売上高が1千万円を超えているかどうかで判定する。だから、起業当初は納税する必要がないことが大半となっている。
ただし、当初から一定の届出をしていたり、設立時の資本金が1千万円以上であればこの決まりの適用がないのである。
もう一つは、受け取った消費税より支払った消費税が多く、納税ではなく還付になるというパターンだ。
事業の開始年度など、売り上げがほとんどないのに設備投資や経費の支払いが多額になる場合、預かった消費税よりも支払った消費税が多くなり、結果的に消費税が還付されるという仕組みだ。
この場合、当初より消費税の課税事業者選択届出書という書類を税務署に届け出る必要がある。ただ、この届け出を提出すると2年間は継続する必要がある。
したがって、2年目以降の状態も考慮しないと、この規定を本当に選択してよいかという事態になりかねないので注意が必要である。
(髙村税理士事務所代表、髙村健一)