
今年1月に観光庁が発表した2023年暦年の訪日外国人旅行消費額は5兆2923億円(2019年比9.9%増)で過去最高を更新した。また、訪日外国人(一般客)1人当たり旅行支出は21万2193円(2019年比33.8%増)で、これも過去最高を更新している。2023年3月に閣議決定された「観光立国推進基本計画」において掲げられた指標のうち「訪日外国人旅行消費額を早期に5兆円にする」というものと「2025年までに訪日外国人の旅行消費額単価を15万円から20万円まで引き上げる」という目標が早くも達成されたことになる。
消費額総額でみると、国籍・地域別では(1)台湾7786億円(2)中国7599億円(3)韓国7444億円(4)米国6062億円(5)香港4795億円(6)豪州2088億円(7)タイ1902億円―と続く。1人当たりの消費金額では、国籍・地域別に(1)スペイン34万1562円(2)豪州34万604円(3)イタリア33万5691円(4)英国33万811円(5)フランス32万4092円(6)中国31万9924円(7)ドイツ30万3971円―と7カ国で30万円を超える結果となった。
2023年の年間訪日外客数は2506万6100人であり、4月の水際措置撤廃以降、訪日外客数は急回復し、10月に単月で初めて2019年同月比100%を超え、年間累計では2019年比78.6%と8割程度まで回復が進んだことになる。
単純計算となるが、訪日観光客の数が2019年水準に近い2割増しとなった場合、消費金額も5.3兆円の2割増しで6.3兆円の消費が期待されることになる。自動車の12兆円、化学製品の8.7兆円に次ぐ第3位の輸出産業といわれる中で、この市場が大きく成長していることは非常にありがたいことだ。
こうした回復・成長の大きなトレンドに対してどうすべきなのか? 観光立国推進基本計画の中でも掲げられている「持続可能な形での観光立国の復活」に向けて、わが国固有の温泉、旅館、食、文化、歴史等の観光資源と文化資源との連携を常に意識し、理解しながら動くことこそがカギとなるだろう。
各地にお邪魔した際に感じるのは、結局何がオリジナルの特徴なのかが端的に整理されていないという課題だ。地域独自の資源の価値を、文化地理学的に他にはない独自の要素として客観的に整理して提示できるかが大事になる。施設単独ではなく、地域における独自のコアバリューは何なのか? これをターゲットに響く形で、ストーリーのある独特の世界観としてより際立たせられれば、消費単価アップを通じてさらによい循環にもっていけるはずだ。
改めて地域のコアバリューを地域ビジョンとして再定義し、コアバリューを体感できる世界観として、ソフト・ハード共に再編集されていくことを期待したい。また、地域の方が理解し納得するためには、客観的にもっと外を知る必要があるだろう。2023年の日本人海外旅行客数は962万人で、2019年比47.9%と半数に届いていない。海外が難しければ、国内のベンチマーク先でもよい。自ら他を体感する中で、オリジナルな自地域の価値を自分の言葉で語り、独自化要素を磨き上げていく投資ができれば、リターンはすぐに返ってくるに違いない。
(地域ブランディング研究所代表取締役)