【私の視点 観光羅針盤 200】古墳群の世界遺産登録 北海道大学観光学高等研究センター特別招聘教授 石森秀三

  • 2019年7月15日

 7月初旬にアゼルバイジャンで開催されたユネスコの世界遺産委員会で、大阪府南部(堺市、羽曳野市、藤井寺市)の「百舌鳥・古市古墳群」を世界文化遺産に登録することが正式決定された。日本最大の前方後円墳「仁徳天皇陵古墳」を含む全49基で構成される古墳群が、国内で23件目の世界遺産として登録されたことは非常に慶ばしい。

 私は百舌鳥・古市古墳群の世界遺産登録運動の初期段階から有識者会議のメンバーとして関わってきたので極めて感慨深いものがある。

 古墳群は4世紀後半~5世紀後半に、政治の中心の一つであった大阪平野に築造された。墳丘の長さ486メートルで「世界最大級の墳墓」といわれる仁徳天皇陵古墳をはじめ、前方後円墳や円墳など200基以上が築かれ、そのうち89基が現存している。皇族の墓として宮内庁が管理し、立ち入りが制限される「陵墓」が29基含まれるとともに、古墳の周辺が市街地化されているために世界遺産登録は極めて難しいとみなされてきた。

 そのような困難な諸条件を抱えていながら、関係者の非常なる努力の結果として、「傑出した古墳時代の埋葬の伝統と社会政治的構造を証明している」という顕著な普遍的価値(OUV)が認められた。

 仁徳天皇陵古墳は、エジプトのクフ王のピラミッドや中国の始皇帝陵と並び「世界3大墳墓」に数えられており、世界遺産登録をきっかけにして数多くのビジターの来訪が予想されている。

 しかし「百舌鳥・古市古墳群」は市街地に広く点在しており、また立ち入りが厳しく制限される「陵墓」が29基も含まれているために古墳群の全体像や遺産価値を分かりやすく伝える工夫が不可欠になる。

 幸い、今年1月から実施されている国際観光旅客税(出国税)導入によって文化庁と観光庁の予算が大幅に増額されている。文化庁は「文化財を活かした観光戦略推進プラン」事業に155億円、観光庁は「地域固有の文化、自然等を活用した観光資源の整備等による地域での体験滞在の満足度向上」事業に224億円を計上している。それらの予算を活用して、顕著な普遍的価値(OUV)の理解向上を図ることが大切だ。

 一方、世界遺産は「人類共通の財産」として顕著な普遍的価値を損なうことなく、後世に伝えていくことが第一義であり、古墳群の周辺市街地の開発から世界遺産の景観を守ることを含めて、国や地域が一体となって世界遺産の保存管理に尽力することが不可欠である。

 併せて、日中韓はかつて古墳文化を共有していたので、それらの類似性と独自性を明らかにしながら、世界文化遺産を通して、政治・経済の面での緊張関係を克服しながら友好交流を進めることが求められている。観光業界はこのたびの古墳群の世界文化遺産登録を契機にして、「文化的安全保障としての観光」の意義を大いに知らしめるべきであろう。

 (北海道大学観光学高等研究センター特別招聘教授)

     
 
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