【私の視点 観光羅針盤 177】観光による経済効果を確実にするために 村橋克則

  • 2019年1月14日

 観光の経済効果への期待が高まり、各地でDMOが組成されさまざまな動きが活発化している。しかし、漫然と活動していてもその効果は薄い。交流人口の増加をしっかりと経済効果に結びつけ、地域の永続的な成長につなげるために大切だと思われる点について「観光産業」の持つ二つの特性から指摘しておきたい。

 第一に、観光は「ビジター」産業であり「無形性」の高い産業だということ。顧客の多くは域外からの来訪者であり、その地域(つまりは商品)についてほとんど知らないということが前提になる。主な顧客が域内の住民であるクリーニング業やスーパーマーケットとは戦い方が大きく異なる。

 また、観光が最終的に提供するのは「心地よい時間」や「素敵な思い出」。つまりカタチのないものだ。前もって現物を見ることも触ることも試すこともできない。顧客(特にインバウンド)にとって、日本のある地域を選んで、来訪を決め、決して安くはない金額を支払うことは一か八かの買い物なのだ。顧客にとっては「情報」だけが唯一の頼り。ここにDMOはじめ観光団体の腕の見せどころがある。

 誰(国や地域、旅行選択行動によるタイプ)に、どんな情報を、どのタイミングで、どういう伝え方をすれば顧客の心を動かし、旅行行動に誘導できるのか、緻密で戦略的なマーケティングが必要になる。特に、一過性ではなく、顧客(需要)を創造し続けられる「仕組み」を構築することが地域にとって最も大切なことだ。

 第二に、観光は典型的な「時間消費型」産業だということ。その大半を占める「移動」と「見物」は地元にお金が落ちにくい。富士山も瀬戸内海も、ただ見てもらうだけでは1円にもならない。大事になるのが換金化できるプロダクト(商品・サービス)の存在。顧客が喜んで財布のひもを緩めてくれるモノやコトをどれだけそろえられるかがキモになる。

 DMO(特に地域や地域連携DMO)が直接、商品・サービスを作るケースもあるだろうが、それだけでは顧客の多様なニーズ、刻々と変化するマーケットの要請に応え続けることは難しい。大切なのは、域内の事業者が次々と商品・サービスを生み出すための仕掛け、仕組みである。

 せとうちDMOでは「せとうちDMOメンバーズ」という会員組織を作り、交流人口の増加をビジネスチャンスと捉える積極的な事業者の参加を募っている。年2回の大規模な集会や月イチ程度の小規模な勉強会を実施し、われわれ組織の戦略や取り組みを説明し、マーケット拡大への期待値を高めるとともに、事業者同士の交流や相互作用を促すことで、商品・サービス開発への意欲を喚起している。

 加えて、投資や融資といった資金面での支援メニューも用意し、事業者の商品・サービス開発を強力に後押ししている。

 顧客を創造し続けるマーケティングの「仕組み」とプロダクトを生み出し続ける「仕組み」の両方をバランス良く回し続けることで、観光による経済効果は確かなものとなるのだ。

(せとうち観光推進機構事業本部長)

 
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