【私の視点 観光羅針盤 124】シェアリング・ヘリテージへの期待 石森秀三


 11月20日に東京で天皇皇后両陛下ご臨席のもとで「地方自治法施行70周年記念式典」が挙行された。地方自治法は地方公共団体の健全な発展を保障することを目的にして、1947年に施行された法律。記念式典では地方自治功労者に対する総務大臣表彰が併せて行われた。

 私が会長を務めているNPO法人北海道遺産協議会は「行政に積極的に参画し又はコミュニティづくりに熱心に取り組んでいる民間団体」として地方自治功労者表彰を受けた。

 北海道遺産は、次の世代に引き継ぎたい北海道の大切な宝物で、豊かな自然はもちろん、北海道に生きてきた人々の歴史や文化、生活、産業など有形・無形の財産が含まれている。

 2001年に北海道遺産構想推進協議会が設立され、01年と04年に道民参加によって52件の北海道遺産を選定、08年にNPO法人北海道遺産協議会が設立された。北海道大学名誉教授で植物生態学者の辻井達一先生が北海道遺産構想の当初から推進役を担われ、NPO法人の初代会長を務めておられたが13年にお亡くなりになり、私が2代目会長を務めている。

 北海道遺産協議会は来年、北海道命名150年になるために新たな北海道遺産の募集を行うことを決めている。今回は特定の個人や団体・地域によって所有・管理されているさまざまな遺産を教育や観光・企業活動などを通して、多様な人々とシェア(共有)することで新たな価値を創造することに力点を置いて、新規遺産の選定を行う予定である。

 そういう意味で今回は「シェアリング・ヘリテージ(地域の宝物を多くの人々とつなぎ、地域づくりにつなげる)」という考え方に基づく選定になる。そのために次の時代へ継承すべき価値ある遺産と、それを守り・育て・活用する人々の思いが重要になる。

 北海道のイオングループ(イオン北海道株式会社、マックスバリュ北海道株式会社)は11年から「ほっかいどう遺産WAON」を発行(現在約23万枚)しており、それらを活用した北海道遺産支援を行っている。このWAONカードの利用金額の0・1%が毎年NPO法人北海道遺産協議会に寄付されており、昨年度には1445万円が寄付されている。

 既存の北海道遺産を管理している諸団体は活動資金の確保に難渋しており、上記の寄付金を活用した協議会による活動助成が功を奏している。

 安倍政権は地方創生を最重要課題と位置づけているが、地域資源を用いて地域活性化を図ろうとしても、現実には人財不足と資金不足によって思うように地方創生が進展していない。そういう意味で、北海道遺産協議会はイオングループの支援を受けながら地域づくりに貢献しており、今回の地方自治功労者表彰を受けるに至った。このような民産官学の協働によるシェアリング・ヘリテージの動きによって地方創生の新局面が拓かれることを期待したい。

 (北海道大学観光学高等研究センター特別招聘教授)

 
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