【特別インタビュー】サウジアラビア王国 ナーイフ・アルファハーディ大使に聞く


駐日サウジアラビア王国特命全権大使 ナーイフ・アルファーディ氏

観光による新たな交流促進へ

国の変革の最前線に 日本など49ヵ国へ観光査証解禁

 サウジアラビア王国は2019年、日本を含めた49カ国に観光ビザの発給を解禁。新たな海外旅行のデスティネーションとして注目されている。一方、富裕層の多い同国は、インバウンドにおいても有望市場として今後の拡大が期待されている。駐日サウジアラビア王国特命全権大使のナーイフ・アルファハーディ氏に「観光による新たな交流促進へ」をテーマに語っていただいた。(東京のサウジアラビア王国大使館で)

 ――サウジアラビア王国はどのような国でしょうか。歴史、自然、文化、産業、その他、貴国ならではの魅力をお聞かせください。

 サウジアラビアは、豊かな文化や遺産を有し、世界中の旅行者にユニークな初めての体験を提供する、いま、世界で最もエキサイティングな観光地の一つです。
中東で最も大きい国であるサウジアラビアの美しさは、その多様性にあります。素晴らしい世界遺産、活気に満ちた海洋の生態系、息をのむような風景、温暖な高地。そして13の州に多様な文化、郷土料理、風景がある、1年中訪れることができるデスティネーションです。

 サウジアラビアには、手つかずのビーチや豊かなサンゴ礁が広がる紅海から、砂漠でのグランピングや本格的なベドウィンの体験に最適な壮大なアラビア砂漠、そして温暖なアシール高原まで、一般的なサウジアラビアのイメージを覆すような、並外れた自然の資源があります。

 観光業は、サウジアラビアの社会経済の未来の新しい青写真となる「Vision 2030」に沿って、国の変革の最前線に据えられています。経済全体にまたがるセクターである観光業は、持続的なプロモーションと訪問者の誘致を通じて、サウジアラビアの国と人々の両方に刺激的な機会を提供します。E―ビザの導入により、訪問が大幅に容易になりました。

 ――2019年9月から日本を含めた49カ国に観光ビザの発給を解禁しました。

 サウジアラビアは、2019年9月に初めて海外からのレジャー観光客に開放されました。これ以前は、サウジアラビアは毎年何百万人もの巡礼者を聖地に迎えてきた長い歴史があります。

 E―ビザプログラムの開始から2020年3月に(コロナ禍で)国境が閉ざされるまで、サウジアラビアは40万を超える観光ビザを発行し、2019年に世界で最も急速に成長しているデスティネーションになりました。

 E―ビザは1年間有効な数次ビザで、観光客は1回の訪問につき最大90日間、年間最大180日間滞在できます。料金は約1万5千円で、旅行前に素早く使いやすいE―ビザポータルサイト(https://visa.visitsaudi.com)から申請いただけます。

 ――社会的な改革はいつから始まり、どのように海外、特に日本人に影響を及ぼすのでしょうか。

 サウジアラビアは2016年から変革の旅に乗り出しました。この変革の旅はVision 2030と名付けられ、国の潜在能力を引き出し、世界をリードする経済力により繁栄する国家に躍進するという目標の達成のために、前例のない社会・経済改革を実施する触媒として機能しています。

 Vision 2030がサウジアラビアの機関にどのようなプラスの影響を与えているかを示す一例として、サウジ政府は世界銀行と提携し、サウジでのビジネス体験を向上させるようなビジネス促進のための改革を特定する取り組みを行っています。これまでのところ、517以上の経済促進改革が特定されており、これらの改革の77%が実施されています。その結果、サウジアラビアは世界銀行よりトップレベルの改革者であるとの評価を得ています。

 サウジアラビアのVision 2030において改革が進められている新規分野の中で、観光と生活の質の分野ほど、深く、目に見える変革が行われているものはありません。

 サウジアラビアの旅行・観光分野の目標は、現在の年間GDPの3%を、2030年までに10%超にすることです。

 サウジアラビアの建設許可取得済みホテルでは、すでに2022年までに15万室のホテル建設が計画されており、そのうち30%が政府出資、70%が民間主導で建設される予定です。空港についても2030年までに年間1億人以上の旅客の利用が可能となります。

 これらの取り組みはすべて、サウジアラビアと海外の観光客双方に影響を与えることが期待されますので、日本のアウトバウンド観光市場の来訪とサウジアラビア観光市場への参加が最も歓迎されるところです。

 ――サウジアラビアにはどのような観光スポットがありますか。これからより多くの観光客を呼び寄せるために、何か開発プロジェクトは進んでいますか。また、観光に関するDX計画などがございましたらお聞かせください。

 サウジアラビアでは、世界トップクラスの観光資源、アトラクション、イベントをご用意しています。紅海の海岸沿いの手付かずの白いビーチから、アシールのサルワット山脈の端にある雄大な景色、そして歴史的な海岸都市のジェッダまで、さまざまな場所をお楽しみいただけます。

 今年、サウジアラビアでは、いくつかのギガプロジェクトの第1フェーズに加え、非常に幅広いアトラクションが稼働します。一流ホテルブランドの新しい施設や、世界的に有名なレストランが続々オープン予定です。「teamLab Borderless Jeddah」がジェッダの新しいデジタルアートスペースになり、「CyanWaterpark」は世界有数のウォーターパークに仲間入りします。すでに開催されたサウジデザインフェスティバル、サウジカップ、ジェッダグランプリは、観光客、サウジアラビア人どちらからも大きな注目を集めました。

 ディルイーヤと紅海では第1フェーズとして今年からゲストを迎え始める上、クルーズについても、「Cruise Saudi」とのパートナーシップによりサウジ国内クルーズと国際クルーズのどちらもお楽しみいただけるようサービスを拡大しております。

 また、サウジアラビアのユニークな生態系と野生生物を旅行者に体験いただくため、国の自然保護区の多くでの観光をスタートさせます。

 デジタルテクノロジーを活用して、皆さまに快適な経験をしていただくための工夫もしていきたいと思います。

 

人々は日本への旅行を好む

旅館のおもてなしに深く感動

 ――環境問題への対応が叫ばれていますが、観光と環境はどのように共存できると考えていますか。

 サウジアラビアは、サステイナブル・ツーリズム(持続可能な観光)、そしてより重要なリジェネラティブ・ツーリズム(再生型の観光)に関して、非常に公的かつ大規模な取り組みを行っています。

 100%再生可能エネルギーを使用するカーボンニュートラルなデスティネーションとして、自然環境にプラスの影響を与えることを目指す紅海プロジェクトは、すでにリジェネラティブ・ツーリズムの新しいスタンダードとなっています。

 アル・ウラーにおいては地元のコミュニティに多額の投資を行っており、この地域の人々が観光業を通じて成功するキャリアを築く機会を、身近に生み出しています。

 リヤド市においては、市内に750万本の木を植え、生物多様性を高め、エネルギー消費を減らし、住民と訪問者が楽しめる魅力的な緑地を作る構想を発表しています。

 ――貴国の旅行市場について。サウジアラビア国民の年間の海外旅行人数はどのぐらいですか。訪問国はどの国が多く、そのうち日本はどのぐらいの位置にありますか。社会的改革で貴国の観光市場はどのように変わっていくと想定されますか。

 サウジアラビア人は年間約200億ドルを海外観光に支出しており、国内外での観光セクターの強化・促進に伴い、その一部は地域経済へ移行しています。世界的には、米国、英国、インド、スイス、トルコ、ドイツ、マレーシアなどが、サウジアラビアから多額の観光収入を得ています。近隣地域では、アラブ首長国連邦、エジプト、バーレーンなどが、サウジアラビア国民がレジャーや観光のために旅行する国として挙げられます。

 日本はサウジアラビアにとって重要な貿易相手国であり、経済的・外交的にも友好的な関係にあります。サウジアラビアの人々は日本への旅行を好み、常に日本をお気に入りの旅行先の一つと考えています。従って、近い将来、特に世界的なパンデミック対策が改善されれば、両国間の観光交流はさらに拡大すると予測されます。

 ――サウジアラビア国民から見た日本の一般的なイメージは。また、大使から見た日本の印象、魅力についてお聞かせください。

 サウジアラビア人が日本に対して抱く印象の一つに、日本人の礼儀正しさや親切さがあります。日本語で「他人に対して敬意を表する」という心遣いは、サウジアラビア人が日本人と接するときに感じるもので、いつまでも良い印象として心に残るものです。実際、友人や家族に日本での体験を話すとき、日本人がいかに相手に敬意を払い、親切であるかを強調するポイントの一つになっています。

 1993年から1999年まで東京と宮崎を行き来し、多くの場所を訪れ、日本文化を深く理解する機会を得た私にとって、日本は第2の故郷です。

 私が日本で見た美しいものの一つは、世界で最も進歩した近代経済を進めつつ、歴史的な観光地とともにその習慣や文化をも維持し、さらに促進することに成功していることです。ユネスコの世界遺産を楽しみながら、近くの高層ビル群を散策し、地元の人たちと触れ合うことで、その寛容さと独自の個性が忘れがたい経験を与えてくれます。
日本の都道府県や歴史的な観光地を訪れる計画は、パンデミックのために一時的に中断されましたが、私のやりたいことリストの上位にありますので、この計画を実行に移す日が来ることを楽しみにしています。

 ――日本ならではの宿泊施設「旅館」に泊まった経験はありますか。ある場合には、その時の感想や体験談をお聞かせください。

 日本に来てから、京都や箱根など、東京以外の場所の旅館に何度も泊まっています。壮大な自然や山々のパノラマに囲まれながら、日本の伝統的なライフスタイルや文化を体験することが大好きだからです。

 旅館に泊まるたびに、私は日本人の「おもてなし」に深く感動します。旅館のフレンドリーなスタッフが家族のように歓迎し、世話をしてくれること、そしてユニークな建築、美しい日本庭園、本物の「懐石料理」。

 日本での滞在を通して、私は畳や布団のある和室だけでなく、露天風呂にも慣れ親しみ、大都会の喧騒を離れて安らぎを感じています。
いつかパンデミックが終息し、平常な日々が戻ったら、北陸や中国地方など訪れたことのない土地を旅し、地元の旅館に泊まりながら、日本文化の一端に触れてみたいと思っています。

 ――日本を訪れたサウジアラビア国民を宿泊施設などでもてなす場合の注意点は(食、習慣、言葉など)。

 特に注意点などはありません。サウジアラビア人は元来旅行好きで探検家気質なので、柔軟に学び取り入れることをためらいません。その意味でも日本はサウジアラビア人に愛されている旅行先の一つです。

 ――日本を旅行するサウジアラビア国民の数は、全体から見るとまだ多くありません。今後、増やすためには何が必要でしょうか。

 より多くのサウジアラビア人が日本を訪れ、その豊かな文化やユニークな観光を楽しむことは、両国にとって有益な機会です。中長期的にサウジアラビア人の訪日を増やすには、次のようなことに配慮した方がよいかもしれません。

 サウジアラビアと日本の間に直行便を就航させること。現在、サウジアラビア人旅行者は日本に到着するために他の国でトランジットする必要があります。直行便の就航は、特に時間的な余裕のないサウジアラビア人観光客にとって、より頻繁かつ迅速な日本への渡航を促進することになるのは間違いないでしょう。

 食事に関しては、サウジアラビア人は一般的に、宗教上の心配をすることのない選択肢から選ぶ傾向がありますので、日本の皆さまはハラール食品を導入されることをお奨めします。

 サウジアラビア人が観光ビザを取得するための手続きを緩和することも配慮すべきです。条件の緩和により、サウジアラビア人が渡航条件の束縛から解放され、日本への訪問をより頻繁に計画するようになる可能性があります。

 サウジアラビアと日本の双方の訪れるべき主要な目的地を効果的に開発・促進するために、ツアーオペレーター間のパートナーシップを確立することも考慮すべきです。

 ――弊紙の読者であり、貴国を含めて海外へのツアーを造成する日本の旅行業者に向けての要望やメッセージをお願いします。

 2019年のビザ取得方法の緩和をきっかけに、これまで多くの人が抱いていたサウジアラビアのイメージが変わり、新しいサウジアラビアの魅力を感じていただきやすくなりました。

 サウジアラビアの歴史遺産を巡る旅。

 紅海のビーチリゾートなどでぜいたくな時間を過ごす優雅な旅。

 ジェッダ港を起点とする最新の豪華客船を利用した紅海周遊クルーズの旅。

 海外の著名なアーティストによるコンサートを見たり、サウジアラビアで開催されるさまざまなイベントを見たりする旅。

 女友達等との女子旅。

 サウジアラビアでは、このようなさまざまな旅を体験することができます。

 お問い合わせは、下記までお願いいたします。サウジアラビア政府観光局(東京都港区元赤坂1の2の7、赤坂Kタワー4階。TEL03―6890―3062、ウェブhttps://www.visitsaudi.com/ja)。

 ――同じく弊紙の読者であり、貴国を含めた海外からのゲストを受け入れる日本の宿泊施設経営者、観光事業者にメッセージをお願いします。

 日本の観光業界の代表の方々と交流できることを大変うれしく思います。私は、両国の間に横たわる巨大なビジネスパートナーシップの機会と、観光分野での有望な未来について強調したいと思います。

 サウジアラビアと日本は、ビジネス面においても文化面においても、相乗効果のあるパートナーシップを築くことができ、両国の経済が持つ比較優位性を活用することで、観光産業を再活性化し、繁栄する展望を得ることができます。

 私たちは、より多くの日本の観光専門家が東京のサウジアラビア観光局の事務所と関わり、新しいビジネスの取り組みや協力について議論し、近い将来、2国間の観光関係が持続的なレベルで発展することを望んでいます。そのために、私はいつでも必要なサポートを提供できるように努めていきます。

 ありがとうございました。

 ――ありがとうございました。

駐日サウジアラビア王国特命全権大使 ナーイフ・アルファーディ氏

サウジアラビア第2の都市ジェッダの近海。青い海とサンゴ礁が美しい

アシール高原。砂漠だけではない、多様な自然に触れられる

 

ユネスコの世界文化遺産に登録される「ヘグラの考古遺跡」

ジェッダの旧市街も世界文化遺産に登録されている

ジェッダの旧市街も世界文化遺産に登録されている

 
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