【焦点課題】積水ハウス 道の駅プロジェクト運営統括室長 渡部 賢氏に聞く


渡部室長

積水ハウスの地方創生

「道の駅」にホテル展開 新旅行スタイルを創出

 ――積水ハウスでホテル運営事業に携わるようになったきっかけは。

 「前職では、東北エリアを皮切りに、地方を中心とした旅館やリゾート再生、ブランディングや魅力開発に従事した。積水ハウスが掲げる地方創生事業のビジョンに強く共感し、転職した」

 ――トリップベース(Trip Base)道の駅プロジェクトとは何か。

 「積水ハウスとマリオット・インターナショナルが連携して行う、隠れた観光資源を顕在化する地方創生事業。全国の『道の駅』の隣接地に『フェアフィールド・バイ・マリオット』ホテルを展開する。地域の情報を集約している道の駅を拠点とすることで、地域観光のポテンシャルを最大限引き出し、滞在型の観光需要を創出する。また、ホテルをハブにして、地域の観光資源をネットワーク化することで、各地の道の駅を渡り歩く新しい旅のスタイルの構築、発信も目指している」

 ――進出先の既存の観光事業者からは警戒されるのでは。

 「ほぼ全てが100室以下の宿泊特化型ホテルで、レストランも大浴場も設けていない。食事や買い物は隣接の道の駅に行っていただく。ホテルスタッフはマリオットが現地雇用している。主役はあくまで地域の方々。地元の観光産業のサポート、共存共益を目指している」

 ――具体的な開業計画は。

 「20年10月6日に岐阜県で2軒を開業したのが最初だ。道の駅『美濃にわか茶屋』に『フェアフィールド・バイ・マリオット・岐阜美濃(全54室)』を、同『みのかも』に『フェアフィールド・バイ・マリオット・岐阜清流里公園(全85室)』をオープンした。21年度末までに、岐阜県、栃木県、三重県、京都府、和歌山県、奈良県の6府県で15施設・1152室を開業する。さらに22年末までに、北海道、兵庫県、広島県、岡山県、鹿児島県の5道県で約1千室を開業。23年以降は茨城県、富山県、石川県、福井県、長野県、静岡県、滋賀県、愛媛県、香川県、山口県、長崎県、福岡県、熊本県、山梨県の14県でも展開を予定している。25道府県の自治体と連携し、25年までに3千室を展開する計画だ」

 ――ホテル出店する自治体はどのように選定しているのか。

 「地方創生が目的なので、東名阪といった大都市圏は最初から除外している。トリップベース道の駅プロジェクトにご理解、ご賛同いただいた自治体から出店を進めている。これまでに栃木県で3軒、岐阜県で4軒、三重県2軒、京都府3軒、和歌山県2軒を開業した」

 ――事業スキームは。

 「事業主体は、当社とメガバンク、地方銀行、そして電鉄、バス、地元企業などからなるSPC(特別目的会社)。このSPCが自治体、個人などの土地所有者と賃貸借契約を結ぶ。建設費等の資金は当社やメガバンクで組成する『ファンド』で調達。設計、施工、プロジェクトマネジメントは当社が担当する。当社100%子会社のトリップベースマネジメントがSPCと建物の賃貸借契約を結び、ホテル運営は、そこからマリオット・インターナショナルに委託するというスキームだ。ホテル経営の責任はトリップベースホテルマネジメントが負う」

 ――マリオットとの元々の接点は。

 「積水ハウスは、マリオット・インターナショナルをメインオペレーターとして、主要都市にオーナーとしてホテル開発をすすめてきた。セントレジスホテル大阪、ザ・リッツ・カールトンホテル京都、W大阪などだ」

 ――地方創生でマリオットブランドのホテルを展開する背景には、インバウンド需要の取り込みという目論見もあった。

 「新たな旅行スタイルの創出によって、旅行人口の増加に貢献していくことが本プロジェクトの目的。国内旅行マーケットの活性化と、インバウンド市場における地方観光の定着化を目指している。インバウンドでは、都市観光からの分散、日本滞在の満足度向上、訪日リピート率アップを図りたい。コロナ収束後を見据えて着実に展開していく」

 わたなべ・さとし=1977年生まれ(43歳)。大学卒業後、和菓子メーカーでの店舗運営、自動車メーカーでの店舗運営・セールス経験を経て、2006年に星野リゾート入社。星野リゾート青森屋総支配人、全国37施設(当時)の運営統括本部長などを歴任。19年、星野リゾートREITが所有するハイアットリージェンシー大阪の代表取締役に就任。20年6月、積水ハウスに入社し、開発事業部トリップベース事業推進室道の駅プロジェクト運営統括室長(現職)。

【聞き手・江口英一】

 
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