観光客が集中し、混雑や騒音、地価高騰、地域資源の破壊といったダメージをもたらすオーバーツーリズム。そのさまざまな背景や実態、対策について日本総合研究所調査部主任研究員の著者がまとめた。国内外の事例紹介にとどまらず、オーバーツーリズムへの対処方法について、できるだけ具体的に明示するよう努めている。
「訪日外国人観光客の急増とその背景」から「オーバーツーリズムへの向き合い方」まで9章構成。1~3章は観光の現状、オーバーツーリズムの定義や世界的に問題化した経緯など、総論的な記述が中心。4、5章は内外の具体例、6章以降は新しい動きについてまとめている。
新型コロナウイルスの世界的流行でインバウンドの動きがほぼ皆無となった。ただ、いつか動き出すことは間違いない。今を準備段階と捉え、かつての轍(てつ)を踏まぬよう、また被害を被らないように、自治体や観光地は学習が必要だ。その指針となる1冊といえる。
四六判、272ページ。定価2300円+税。
発行=学芸出版社。