
玉露は急須で淹(い)れるだけではなく、「雫(しずく)茶」として味わういただき方があります。
この方法は、平成12年秋に、福岡県八女郡星野村の山口氏ご夫妻に案内していただいた「茶の文化館」で体験し、感動したことから、すぐにお茶教室で紹介し始めました。蓋碗(がいわん)、湯冷ましとセットになっている専用の茶器もありますが、ご家庭にあるぐい呑(の)みなどの杯を使っても楽しめます。
その際、茶量と湯量は、器の大きさにより調整します。浅めの杯の中心に3グラム前後の玉露を中央に置き、40度ぐらいの湯を20cc弱、周りから静かに注ぎます。それにかぶせるように、(直径が短い)杯を乗せます。2分待ち、蓋(ふた)を取らずに少しずらしてから口に当て、肘を張りながら天井を仰ぎ、落ちてくる「雫」をすすります。口いっぱいにお茶のふくよかな風味が広がります。まるで玉の露を舌に転がし味わう気分です。教室では、「あぁ」と感嘆の声が。「おだしみたい」との感想も。
2煎目は50~60度ぐらいの湯、20ccを注ぎ、2分弱置くと、まろやかさが際立ちます。お干菓子などをお供にどうぞ。3煎目は70~80度の湯に1分ほど浸し、爽やかな渋味を味わって下さい。
その後の茶殻は、酢味噌(みそ)や酢醤油(じょうゆ)、醤油などをかけて召し上がることもできます。かつお節やしらすを添えても乙な味です。冷酒のおつまみにもお勧めで、まるで緑黄色野菜のおひたしのようです。栄養的にも湯に溶け出さないビタミンAやE、食物繊維などを摂(と)ることができます。
また、柔らかな茶殻は他の料理にも使えます。かき揚げの材料に加える、ハンバーグに入れるなど。特に夏場のお弁当には、茶殻を加えることにより、腐敗防止効果も期待できます。ただし、茶殻は傷みやすいので、すぐに使わない場合はラップで包み、冷凍庫で保管すると安心です。解凍せずに、そのまま調理できます。