情報発信、分析にSNS重要
GCC6カ国(※1)およびトルコ、イスラエル等から成る中東地域市場は、2020年度に重点市場となった新しい市場で、訪日客数はまだ少なく伸びしろの多い市場である。今回は、まだ日本になじみが薄い中東地域からの旅行者の傾向を、JNTOが実施した22市場基礎調査の結果等からご紹介する。
22市場調査によると、中東地域の訪日経験者の割合は4.8%で、同行者は配偶者・パートナー、友人、自分ひとりの順に多い。3月、4月の桜シーズンの訪日が別月に比べ突出して多く、これを裏付けるように、5月にドバイで開催された中東地域最大規模の旅行博であるアラビアン・トラベル・マーケットではJNTOブースの来場者から、桜が見たいとの声が多く聞かれた。
訪日旅行に限らず、旅行に求めるニーズは、「リゾートやホテルでのんびりしたい(78.2%)」「ショッピングを楽しみたい(64.1%)」「豊かな自然を鑑賞したい(62.8%)」の割合が高い。日本に対するイメージでは、「最先端の技術に触れられる(24.1%)」「リラクゼーションに向いている(22.8%)」「自然の素晴らしさがある(21.4%)」の割合が高い。
中東地域からの旅行者のニーズと日本へのイメージのどちらにも合致しているリラクゼーションや自然は、打てば響きやすいコンテンツだと言えるだろう。JNTOドバイ事務所では、21年12月からFacebookおよびInstagramの運用を行っており、現時点の傾向として、特に、自然に関する投稿に対するユーザーの反応は他に比べて多い。
海外旅行のきっかけとなる情報源は、友人や知人、インフルエンサーのSNSや口コミの割合が高い。また、アラブ首長国連邦のデジタルマーケティング会社が実施した調査(※2)によると、人口に占めるソーシャルメディアの利用率は、UAEで98.99%、サウジアラビアで82.30%と非常に高く、フランスのコンサルティング会社が実施した調査(※3)では、ソーシャルメディアの1日当たりの利用時間は、サウジアラビアが5時間6分、トルコが4時間54分、日本が2時間18分という結果もある。
これらのことから、中東地域の人々の生活にソーシャルメディアが強い影響力を持ち、その活用方法が、プロモーション活動等でも特に重要な側面を担うということが言えるだろう。JNTOドバイ事務所で運営しているSNSでも、今後、より体系的に投稿を行い、ユーザーの反応を分析することで、これらSNSを情報発信の手段としてだけではなく、市場インサイトを知る手段としても活用していくことを目指している。
日本は6月10日から水際対策を緩和、「青」区分に指定された国・地域に限定して外国人観光客の受け入れを再開したが、中東地域は「青」と「黄」区分に指定された国・地域があり、市場全体から訪日客を迎えることは先となった。来るべき時に備え、JNTOドバイ事務所では、引き続き、日本が旅行先として想起・選択されるよう情報発信やプロモーション活動を行っていく。 (月1回掲載)
※1Gulf Cooperation Council 湾岸協力理事会(サウジアラビア、アラブ首長国連邦、バーレーン、オマーン、カタール、クウェート)を指す。
※2出典United Arab Emirates(UAE) Social Media Statistics 2022―GMI(globalmediainsight.com)
SAUDI ARABIA SOCIAL MEDIA STATISTICS 2022―Official GMI Blog(globalmediainsight.com)
※3出典「日本人はソーシャルメディアに接している時間が世界24カ国中最も短い」イプソス調査=世界1万8千人にアンケート―ITmediaマーケティング
JNTOドバイ事務所が運営しているFacebook