【日本政府観光局インバウンド最新リポート 43】カナダからの訪日誘客 JNTOトロント事務所 山下俊一 次長


カナダで「非白人」を示すビジブルマイノリティ(少数派民族)のオンタリオ州の構成比

英・仏・中の言語別に対応

 2017年のカナダからの訪日客数は30万6千人で、アジア各国からの訪日客数には到底及ばないが、欧米豪地域の中では米国、豪州、英国に次ぐ4番目の規模を誇る。カナダ人訪日客の平均像を挙げると、旅行者の年齢層は20歳代が最多で、初回の訪日者が約7割を占める。行程は首都圏と関西圏を巡るゴールデンルートにもう1都市を加えたくらいのパターンが多く、典型的な「初心者マーケット」となっている。

 この国で観光プロモーションを行うに当たり、押さえておかねばならない特徴がある。日本のおよそ27倍という国土の広さもさることながら、最大の特徴は移民による国民の多様性だ。16年の国勢調査によれば、全人口3515万人に対し21.9%が移民となっている。11年からの5年間だけでも121万人もの移民を受け入れており、中でも飛び抜けて多いのはフィリピン、インド、中国からの流入である。

 一方、カナダでは、いわゆる「非白人」を示すビジブルマイノリティと呼ばれる少数派民族の定義があり、全人口の22.3%を占めている。ここには、カナダ人として生まれ育ちカナダ国籍を持ちながらも、人種的または文化的な特徴によってカナダの主流派と異なるためにこのカテゴリーに分類される人々を含む。ありていに言うと、街を歩いている時にわれわれが「移民が多いな」と感じる割合のことである。日本人にとっては移民やビジブルマイノリティという言葉の定義すらあまりなじみがないが、この区分が普通に認識される社会と考えただけでも、カナダ社会の民族の多様性が想像できよう。

 グラフは、国内で2番目にビジブルマイノリティの多いオンタリオ州のデータだが、同州ではビジブルマイノリティが人口の約3割に達している。そのうち南アジア系(インド系)、中華系、黒人系、フィリピン系の四つの人種で4分の3近くを占める。米国が人種のるつぼと言われるが、カナダも全く負けていない。

 当事務所の行う訪日プロモーションもこのカナダの民族の多様性を踏まえて計画している。ただし、現実的には日本に興味を持つ層は人種的、文化的に一定度限られるので、当事務所では言語別に、英語、仏語、中国語の三つのマーケットに分けてアプローチを行っている。カナダの公用語は英語と仏語だけだが、中国語のマーケットも主にトロントと西海岸のバンクーバーなど大都市圏に存在する。仏語圏は東部ケベック州を中心とするが、今年6月にエアカナダの東京行き直行便が就航し、通年運航を始めたことでマーケットが一気に活性化した。ケベック州はまだほぼ手付かずのフロンティアであり、当所もこの地域の開拓にはことのほか力を注いでいる。

 日加修好90周年の節目に当たる今年、訪日需要拡大に向けさらにプロモーションを強化していく所存だ。


カナダで「非白人」を示すビジブルマイノリティ(少数派民族)のオンタリオ州の構成比

 
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