中東で現地の人々と話をしていると、「planet Japan」という言葉を耳にする。地球人が宇宙の惑星に引かれ、興味を抱くように、日本を独自の文化・歴史のある国としてまるで別の惑星のように興味深く捉えていることを表すために、半分冗談でこう表現するようだ。
一方で裏を返せば、日本はあまりにも未知でよく分からない国だと思われているとも解釈でき、彼らにとって日本が遠く、実際に訪れる旅行先としては見られていないことを端的に言い表している。JNTOの調査結果によれば、2021年時点の中東における日本の旅行先としての認知度はわずか5%。「遠いけれどいつか行ってみたい存在」から「具体的な次の旅行先」に昇華させるためには、何よりもまず認知度を向上させることが不可欠である。
では、どのような切り口から日本の観光魅力を発信していくべきか。中東富裕層の誘致において、欠かせないのはラグジュアリーな宿泊施設と快適な移動手段である。中東では外資系ブランドホテルが根強い人気を誇るが、日本としては高級旅館に活路を見いだしたい。高品質な施設と接客サービスに加え、その土地のエッセンスが詰まった旅館は、欧州など競合国との差別化という観点からも強い訴求力を持つ。移動交通では地方部を訪れる際にはプライベートジェットやヘリの活用も有効だ。
また、これまでの分析結果から、中東では特に自然や伝統文化への関心が高いことが分かっている。日本ならではの自然景観や伝統文化体験の訴求こそが、遠い日本を身近に引き寄せる上で重要なコンテンツとなる。その他、中東においてもショッピング需要は高く、家族旅行が中心のためテーマパークも外せない。そして旅行情報の収集においては、友人や有名人による口コミの影響が極めて大きいのが中東の特徴である。
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